アーリーリタイアの資金はいくら必要?資金計画の考え方を解説

アーリーリタイア

アーリーリタイアの資金について

アーリーリタイアとは

簡単に言えば、定年前に自らの意思や判断で会社を辞め、「予め準備した資金」をもとに働くことなく過ごすことです。

「予め準備した資金」とは、一体いくら必要なのか?

アーリーリタイアを決断する上で、最も頭を悩ませる点かもしれません。

とてもシンプルに考えれば、今の収入で生活が成り立つのであれば「年収✕年数」で算出されます。

50歳で年収500万円、人生100年時代と仮にすれば残り人生50年、500万円✕50年は2億5千万円となります。

これでは、多くの人がアーリーリタイアを諦めることでしょう。

100歳まで生きると考えず、仮に平均寿命(男性81.2歳)まで、およそ30年生きると考えてみましょう。

500万円✕30年は1億5千万円となります。

1億円もの差額がでます。

何を言いたいかと言えば、「考え方」ひとつで資金は大きく変わります。

アーリーリタイアの資金は、単純には計算できません。

理由も単純で、人により条件が異なるからです。

家族構成、アーリーリタイアの開始年齢、年金の受給開始年齢、寿命の考え方、持家か賃貸か、戸建てかマンションか、年金の見込額や老後資金、生活レベルの考え方、自動車の有無等、挙げたら本当にきりがありません。

また、物価上昇や消費増税などの外的要因も考えられ、概算でも難しい問題です。

しかしながら、アーリーリタイア資金の「考え方」を知ることで、概算方法をお伝えできるものと考えています。

アーリーリタイア資金の考え方

アーリーリタイア資金=無職期間の資金+老後資金

アーリーリタイア後の人生を「年金受給開始年齢」を境に分けて考えます。

話を進める前提として

50歳でアーリーリタイアを開始し、65歳で年金を受給するとしましょう。

なぜ期間を分けて考えるのか?

65歳以降は一般に「老後資金」であり、例えば定年を迎えたサラリーマンもアーリーリタイアした場合も考え方に変わりはありません。

アーリーリタイアすれば年金受給開始までは無職であり収入は0です。(無職期間の資金が必要となります)

平均寿命まで生きる(およそ80歳)と考えれば15年、人生100年時代と考えれば35年となります。

・無職生活は15年
・老後生活は15年~35年

アーリーリタイア資金
=無職期間の資金+老後資金

老後資金は、誰もが頭を悩ます問題であり、アーリーリタイアに限った問題ではありません。

まずは、老後資金について解説します。

老後資金の考え方

年金受給額を知る

まずは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認してみましょう。

50歳以上であれば「年金見込額」が記載されています。

見込額とは、現時点の給与水準のまま60歳まで働き続けることを前提として計算されています。

 

年金の額は「マクロ経済スライド」で調整されます。

マクロ経済スライドとは、

財源にあわせて給付の水準を自動調整する仕組みを導入し、長期的に財政のバランスをとる枠組みです。

給付水準は財源によって調整され、少子高齢化が進み年金の財源が減った際は、どの程度まで調整されるのか?

予想のつきにくい、国民にとっては曖昧な制度と言えます。

年金2000万円問題から学ぶ

65歳以上の老齢夫婦の年金収入がおよそ21万円、平均的な支出が26.5万円程で毎月5.5万円の赤字、30年ほど生きるとすれば約2000万円が必要というものです。

毎月5.5万円の赤字で、30年ほど生きる(95歳まで生きる)とすれば

5.5万円✕12ヵ月×30年=1980万円です。

年金2000万円問題は生活費のみの考え方で、また条件のいい「モデルケース」の話です。

 

例えば、家のリフォーム、車や家電の買換え等の費用は基本的に含まれていません。

年金2000万円問題から学ぶべきは、毎月の赤字がなければ、老後資金である2000万円は理論上不要と言えます。

例えば、

公的年金(+企業年金+個人年金)が月当たり15万円程の収入があり、その収入内で生活ができ赤字が無ければ、生活費以外(家のリフォーム、車や家電の買換え等)の費用を準備すればいいことになります。

月の収入と支出の差が5.5万円あれば2000万円必要となり、収入内で生活できるのがベストですが、その差額を少しでも減らす努力が必要となります。

老後資金にいくら必要か?誰もが悩む問題です。

アーリーリタイアすると、この問題に一早く直面しますが、遅かれ早かれ誰もがこの問題と向き合います。

 

年金の受給開始時期

老齢年金の支給開始は原則65歳です。

60歳で年金を早くもらいたいと考える方、または健康であるうちは働いて年金を遅らせて貰いたいと考える方等、老後資金の考え方は人によって様々です。

公的年金は、請求することで早めに受け取る(繰り上げ)、遅く受け取る(繰り下げ)が選択できます。

繰り上げは1ヶ月単位で行えます。

本来の年金額から繰り上げ月数、1ヶ月当たり0.5%が減額されていましたが、2022年4月より減額率は1ヶ月あたり0.4%になっています。
(上限は60月、最大24%減額

繰り下げも1ヶ月単位で行えます。本来の年金額から繰り下げ月数、1ヶ月当たり0.7%が増額されます
(上限は60月、最大42%増額)。

アーリーリタイアの場合、繰り下げ受給は無職期間が増える為、検討する必要はないでしょう。

繰り上げ受給は、最短で60歳から年金受給が可能ですが、無職期間が短縮される反面24%減額が生涯続きます。

企業年金や個人年金等で老後資金が潤沢であれば一考の余地があります。

現状、原則65歳での受給が資金計画としては一般的かと思われます。

人生100年時代について

2018年10月、厚生労働省は社会保険審議会の年金部会に対し「厚生労働省推計による長生き見込み」というデータを提示ています。

現状65歳まで生きれば、男性4%、女性14%の確率で100歳に到達します。

推計では男性の場合、96%は100歳に達しません。

男性の平均寿命は、平成29年の簡易生命表によれば約81歳です。

 

寿命の考え方で、アーリーリタイア資金も変わります。

無職期間の資金の考え方

現状の生活レベルを見直さないのであれば、仮に給料が手取り30万円で無職期間が15年とすれば5400万円となります。

アーリーリタイア資金は、

5400万円+「老後資金」となります。

仮に老後資金が2000万円とすれば、アーリーリタイア資金は7400万円となります。

今回伝えたかったのは、老後を見据えた生活支出の改善です。

老後における年金等の収入をしっかり把握し、その生活レベルを知ることです。

アーリーリタイア後の生活ぶりは、老後生活にほぼ等しいと言えます。

老後における年金等の収入が、仮に月額15万円程の収入であれば月15万円以内で生活できれば、年金2000万円問題はクリアーされます。

老後資金は生活費以外の支出分として1000万円程あればいいように思えます。(1000万円の根拠はありません。人によって異なるでしょう)

仮に50歳でアーリーリタイアし、15万円の生活レベルが実現できるのであれば、65歳までの無職期間は2700万円の生活費となります。

この間の生活費以外の支出を仮に1000万円とすれば、「無職期間の資金」は3700万円となります。

事例をまとめると

50歳でアーリーリタイア、65歳からの年金収入(公的年金、企業年金、個人年金等)として月額15万円の収入が見込まれるとした場合、

アーリーリタイア資金=無職期間の資金+老後資金

・無職期間の資金(15年間)=3700万円
【内訳】
生活費=月15万円✕12ヵ月×15万円=2700万円
生活費以外の資金=1000万円

・老後資金(15年~30年)=1000万円
【内訳】
生活費以外の資金=1000万円

アーリーリタイア資金は計算上4700万円となります。

一事例に過ぎませんか、考え方を理解して欲しく、具体的な数値をいれて解説してみました。

いずれにしてもポイントは生活レベルのダウンサイジングです。

アーリーリタイアをしなくても、誰しも老後資金に悩まされ、多くの方が生活のダウンサイジングを余儀なくされることでしょう。