アーリーリタイアとは?
アーリーリタイア(Early Retirement)、直訳すると「早期退職」です。
アーリーリタイアとは、定年前に自らの意思で会社を辞めることです。
サラリーマンは、いずれ定年を迎え会社を辞めます。
現状、定年年齢は65歳で65歳から年金を受給するのが一般的と考えられています。
定年年齢は65歳ですが、60歳で一度会社を退職し再雇用というケースも多く見られます。
公的年金は、
60歳から1ヵ月単位で繰り上げ受給(0.5%/月減額:最大30%減額)でき、65歳を境に70歳まで1ヵ月単位で繰り下げ受給(0.7%/月増額:最大42%増額)することができます。
アーリーリタイアすると年金受給までの間、無収入期間(不労収入がない場合)が発生します。
アーリーリタイア資金は、年金受給を境に「無収入期間」と「年金受給後の期間」の2つに分けて検討する必要があります。
アーリーリタイア資金の考え方
年間基本生活費
アーリーリタイアの資金をイメージする際に基本となる数字です。
「月単位で発生する家計支出」と「年単位で発生する家計支出」の1年間の合計額です。
年間基本生活費は、「生活レベル」を表します。
年間基本生活費が180万円の人と300万円の人では、300万円の人の方が生活レベルは高いと考えます。
年間基本生活費には、突発的に発生する費用や隔年で発生する費用は含めません。
例えば
・テレビが壊れてテレビを買った。
・車を買い替えた。
・台所をリフォームした。
年間基本生活費は、年間で想定できる範囲内の費用とします。
年間基本生活費以外の費用α
年間基本生活費とは違い、突発的に発生したり隔年で発生する費用、想定が難しい費用を「α」とします。
αの具体例
<突発的に発生したり隔年で発生する費用>
・家電や自動車の買換え
・持家であれば家のリフォーム、給湯器やエアコン等の設備更新
<想定が難しい費用>
・医療や介護費等に必要な費用
・物価上昇や消費税増税等、年間基本生活費の上昇分の備え等
αは不確定要素の塊だと思って下さい。
アーリーリタイアの資金イメージ
アーリーリタイア資金を具体的にイメージしてみましょう。
年間基本生活費が異なる独身3名のモデルを例に説明します。
独身 | 年間基本生活費 | 月額生活レベル |
モデルA | 180万円 | 15万円 |
モデルB | 240万円 | 20万円 |
モデルC | 300万円 | 25万円 |
50歳でのアーリーリタイア資金イメージ
・年金受給額を年間180万円(月額15万円)と仮定
・無収入期間は50歳~64歳までの15年間
・老後期間は65歳~100歳までの35年間
モデルAの場合
①無収入期間の資金
=年間基本生活費180万円×15年間=2,700万円
②年金受給後の期間の資金
=(年間基本生活費180万円ー年金受給額180万円)×35年間=0
アーリーリタイア資金=2,700万円+α
モデルBの場合
①無収入期間の資金
=年間基本生活費240万円×15年間=3,600万円
②年金受給後の期間の資金
=(年間基本生活費240万円-年金受給額180万円)×35年間=2,100万円
アーリーリタイア資金==5,700万円+α
モデルCの場合
①無収入期間の資金
=年間基本生活費300万円×15年間=4,500万円
②年金受給後の期間の資金
(年間基本生活費300万円-年金受給額180万円)×35年間=4,200万円
アーリーリタイア資金=8,700万円+α
年間基本生活費 | 無収入期間 | 年金受給後 | アーリーリタイア資金 | |
モデルA | 180 | 2,700 | 0 | 2,700+α |
モデルB | 240 | 3,600 | 2,100 | 5,700+α |
モデルC | 300 | 4,500 | 4,200 | 8,700+α |
40歳でのアーリーリタイア資金イメージ
・年金受給額を年間120万円(月額10万円)と仮定
・無収入期間は40歳~64歳までの25年間
・老後期間は65歳~100歳までの35年間
上記の条件で50代と同様の方法で計算
年間基本生活費 | 無収入期間 | 年金受給後 | アーリーリタイア資金 | |
モデルA | 180 | 4,500 | 2,100 | 6,600+α |
モデルB | 240 | 6,000 | 4,200 | 10,200+α |
モデルC | 300 | 7,500 | 6,300 | 13,800+α |
30歳でのアーリーリタイア資金イメージ
・年金受給額を年間72万円(月額6万円)と仮定します。
・無収入期間は30歳~64歳までの35年間です。
・老後期間は65歳~100歳までの35年間です。
上記の条件で50代と同様の方法で計算
年間基本生活費 | 無収入期間 | 年金受給後 | アーリーリタイア資金 | |
モデルA | 180 | 6,300 | 3,780 | 10,080+α |
モデルB | 240 | 8,400 | 5,880 | 14,280+α |
モデルC | 300 | 10,500 | 7,980 | 18,480+α |
全てのモデルで1億円を超える結果となりました。
同様の方法で計算したまでであって、あくまでもシミュレーション結果だと思って下さい。
年間基本生活費以外の費用αの留意事項
αは、とても大きな金額であることを承知おき下さい。
単にαと明記しましたが、
①50歳のα、40歳のα、30歳のαでは金額差があります。
αは期間が長くなれば必然と増えます。
50歳のα<40歳のα<30歳のα
②モデルAのα、モデルBのα、モデルCのαにも金額差があります。
生活レベルが高いほど支出が多く、物価上昇等に備える資金が増えます。
一般に、生活レベルが高い程、高価な物を使う傾向にあります。
例えば、自動車等が一例です。
軽自動車の買換えと高級車の買換えでは費用が異なります。
モデルAのα<モデルBのα<モデルCのα
50歳モデルAのケースでは、アーリーリタイア資金が2700万円+αです。
あくまでも個人の考えですが、
実際のアーリーリタイア資金は、最低でも4000万円以上は必要と考えています。
また、
30歳、40歳でのアーリーリタイアは、余程の資金がなければ踏み切れないでしょう。
資金計画が余りにも長期すぎます。
ある程度の資金があり、会社を辞めたいのであればセミリタイアをお勧めします。
年間支出削減こそがアーリーリタイア実現の最大ポイント
何故、このようなシミュレーションを紹介したか?
年間支出の削減を訴えたかったからです。
50歳でモデルAとモデルBを比較してみましょう。
基本生活費は月額で5万円の違いですが、アーリーリタイア資金は3000万円違います。
生活レベルをダウンサイジングすることで、アーリーリタイアのハードルは大きく下がります。
いくら計算しても拭えない将来のお金の不安
アーリーリタイアすると、余程多額の資金を有すれば別ですが、資金がいくらあってもお金の不安から逃れられません。
20年後、30年後の世の中など誰も想像することはできません。
ある程度見通せるのは、2年~3年、どんなに長くても10年程かと個人的に思います。
30歳、40歳でのアーリーリタイア資金は、計算上は出ますが先がまったく見えない資金計画となります。
例えば、
消費税が8%から10%になりますが、どのくらいアーリーリタイア資金に影響があるでしょう?
100円の商品を買う場合、108円から110円となり2円の違いです。
仮に月に30万円消費するとしましょう。
2%は6000円/月となります。年間7万2000円の支出が増えます。
10年間で72万円、30年間で200万円を超える支出増です。
もし、消費税率が20%になれば、30年間で2000万円を超える支出増となります。
アーリーリタイア後は、常に社会情勢等を意識しなければなりません。
アーリーリタイアは、長期的な資金計画なため「定期的な見直し」が必要となります。
私は会社を辞める前、ネット検索等を駆使し独自でリタイア資金を算定し不安の中、会社を辞める決断をしました。
4年程前にアーリーリタイアしていますが、特にリタイア直後はお金の不安に悩まされました。
この不安を解消する方法として、私はFPを学ぶことにしました。
「家計のホームドクター」と称される、ファイナンシャルプランナーになることで不安解消に努めました。
アーリーリタイアやセミリタイアの方のブログをよく見るのですが、リタイア後にFPを学ぶ方を度々見かけます。
たぶん自分と同じ気持ちなのでしょう。
FPについても別途記事で紹介したく思っています。
将来の社会情勢や自身の寿命など、アーリーリタイアには不確定要素が多く、不安を完全に払拭することは不可能です。
仮に将来、過度な物価上昇や増税、年金減額、大規模な震災等があれば、現時点で作成した資金計画は脆くも崩れます。
どんな優秀なファイナンシャルプランナーであっても、20年後、30年後を「前提条件なし」に見通すことはできません。
日本で生活している以上、そのリスクは皆同じなのです。