【2025年】次期年金制度改革!まずは現行の年金制度の問題点を理解しよう

年金問題

小泉改革で年金は100年安心

現行の年金制度は、2004年に大きく改正され、年金は「100年安心」と政府は国民に明言してきました。

この年金制度改革では「100年安心プラン」として

①上限を固定した上での保険料の引き上げ

②基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げ

③積立金の活用

④財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み(マクロ経済スライド)の導入

が定められました。

もう少し具体的にいうと

2017年度まで年金保険料を段階的に引き上げ、マクロ経済スライドを導入し、5年ごとに財政検証を行い給付水準を見直し、積立金を段階的に取り崩していくというものです。

これにより

今後100年程は、年金給付額の所得代替率を50%以上に維持可能とするものと言われてきました。

所得代替率50%とは、その時(年金を受け取る時点)の現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れると言うことです。

当然ながら、100年という長期スパンでの制度設計であり、少子高齢化問題も考慮されているものと国民は解釈しています。

当時、与党や政府は「100年安心」「100年後でも絶対大丈夫」と明言しており、多くの国民はその言葉を信じてきました。

「年金100年安心」は嘘?

2019年、金融庁のワーキンググループが公表した『高齢社会における資産形成・管理』との報告書に、標準世帯の退職後の生活維持に金融資産2000万円の取り崩しが必要と記載され話題となった、いわゆる「年金2000万円問題」

国民の多くが、2000万円もの自助努力が必要とのことに衝撃を受けました。

「年金100年安心」は嘘だったのか?

「100歳まで年金だけで暮らせないのか」

等の批判が高まりました。

年金100年安心とは

老後は年金で安心して暮らせるのではなく、年金制度の持続性が100年安心であることを知ります。

政府は、当時参院選を控え国民への説明を避けた感があり、明確な説明をすることなく現在に至っています。

予測困難なマクロ経済スライド

厚生労働省のホームページを見ると、マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせ、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みとあります。

国民から見れば、予測困難なブラックボックスとも思える仕組みです。

わかりやすく言えば、年金を「貰う側」と「支える側」の均衡をとる仕組みです。

マクロ経済スライドは、支える側(現役世代)にメリットのある制度で、例えば急激に物価が上昇しても、それに伴う負担をゆるやかに調整します。

逆に貰う側(高齢者)から見れば、マクロ経済スライドが発動されれば年金は目減りする制度とも言えます。

2023年度は、3年ぶりにマクロ経済スライドによる調整(-0.6%)が発動されており、年金額は67歳までは前年度比+2.2%増、68歳からは+1.9%増となっていますが実質目減りしています。

所得代替率50%は生活保護レベルより低い生活水準

2019年の所得代替率は61.7%でした。

所得代替率=「夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金」÷現役男子の平均手取り収入額

で算出されます。

【参考】

夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金=月額22万円

現役男子の平均手取り収入額=月額35.7万円

この数値は、老夫婦二人のモデルケースの話です。

 

 

そもそも、夫婦共働きや単身世帯が増えている中で、モデル世帯で見た所得代替率で年金問題を考えるのは実態に即していません。

所得代替率は、財政検証に関する法律で50%を上回るように定められています。

仮に所得代替率50%となれば、このモデルケースの場合において

老夫婦世帯の年金額は、現行の月額22万円から17.8万円となり4.2万円程目減りします。

つまり、所得代替率が現行の61.7%から50%になれば、年金額はおよそ20%も目減りします。

札幌市における老夫婦の生活保護費は、夏158,890円、冬177,030円(参考値)です。

生活保護の場合、所得税や住民税、固定資産税などが免除されるだけでなく、NHK受信料や水道代などの公的な料金まで免除・減額を受けることができます。

一方の年金受給者の場合、所得税、住民税、介護保険料、国民健康保険料、又は後期高齢者医療保険料が引かれます。

所得代替率50%とは、生活保護のレベルより低い生活水準を余儀なくされます。

2040年問題で提起される年金問題

2040問題とは、

少子高齢化が進み、65歳以上の高齢者人口がピークになることで起こりうる社会問題の総称をいいます。

団塊ジュニア世代が公的年金をもらう65歳を過ぎる頃、現行の年金制度では対応不可能と指摘されています。

団塊ジュニア世代とは、一般に1971年~1974年に生まれた(今現在49歳~52歳)世代を言います。

所得代替率が50%を維持できない状況が想定されています。

(2040年を待たずに、所得代替率50%を切るとの予測もあります)

仮に50%を維持したとしましょう。

例えば、現行制度における50歳サラリーマン(男性)の平均年金額は以下の通りです。

令和3年賃金構造基本統計調査によれば、50歳サラリーマン(男性)の平均月収はおよそ41万円、年収は670万円ほどです。

20歳から60歳まで平均的な給与を貰ったとすれば、平均標準報酬額は44万円程になります。

65歳から貰える平均年金額は、基礎年金5.4万円+厚生年金9.6万円で月15万円程です。

これは現行水準での話です。

もし所得代替率が50%まで低下すれば、およそ20%減となり年金額は12万円/月程と推測されます。

税金や保険料を支払えば、手元に残るのは10万円/月程でしょうか。

現行の年金制度の問題点

・現行の年金制度では、所得代替率50%が下限であり、その下限は生活保護レベル以下の生活水準です。

・現行の所得代替率は61.7%ですが、50%まで低下すると年金額はおよそ2割減となります。

・そもそも、夫婦共働きや単身世帯が増えている中で、モデル世帯で見た所得代替率で年金問題を考えるのは実態に即していません。

・2040年問題では、65歳以上の高齢者人口がピークをむかえ、現行年金制度の維持が困難との指摘があります。

・所得代替率50%が維持されても、現在50歳の平均的サラリーマンの年金「手取り額」は、現在価値で10万円程と推測されます。