2019年11月26日
働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」制度の見直しをめぐり、政府・与党は、与党内からも慎重な意見が出ていることを踏まえ、65歳以上の人が年金を減らされる収入の基準額を今の47万円のまま維持する方向で最終調整に入りました。
在職老齢年金制度は働く高齢者の年金を減らす仕組みで、65歳以上の場合、給与と年金合わせて月額47万円を上回ると減らされます。
これについて、高齢者の就労意欲をそいでいるという指摘もあることから、厚生労働省は、年金が減らされる基準額を引き上げ、制度を縮小する方向で見直しを進めてきました。
しかし野党だけでなく公明党からも「就労意欲の促進につながるか効果が見えづらい」といった指摘や「高所得者の優遇になるうえ、年金の支給総額が増え、将来の給付水準の悪化につながる」など慎重な意見が相次いでいました。
これを踏まえ政府・与党は、年金が減らされる基準額を今の47万円のまま維持する方向で最終調整に入りました。
一方、60~64歳については、就労促進に一定の効果が見込まれるとして、年金が減らされる基準額を今の28万円から、65歳以上と同様に47万円に引き上げる方向で調整しています。
出典:NHK NEWSWEB 在職老齢年金 基準額47万円 現状維持で最終調整へ 政府・与党
65歳以上の基準額47万円は現状維持となりました。
変更となるのが、60歳~64歳の基準額が28万円から47万円になることです。
詳細は控えますが、
女性であれば昭和41年4月2日以後生まれの方であれば、
「得する年金世代」から完全に外れます。
働きながら「厚生年金」を受給する人は約368万人、そのうち3割にあたる124万人が年金を減額されている。
まず、働きながら厚生年金を受給するケースを考えて見て下さい。
あなたは何歳から年金を受給しますか?
特別支給の厚生年金がなければ、多くの方は65歳から年金受給を開始すると回答することでしょう。
今回の措置で60歳~64歳について基準額が28万円から47万円に引き上げられましたが、厚生年金の特別支給がなければ、余り意味がないよう思われます。
現在60歳の方は昭和33年生まれの方です。
男性であれば、厚生年金の特別支給(報酬比例部分)を63歳~64歳の2年間貰うことでしょう。
この間は、基準額47万円のメリットがあります。
仮に、厚生年金の特別支給(報酬比例分)が10万円とすれば、
基準額28万円では18万円以上、基準額47万円では37万円以上の収入があれば年金はカットされることになります。
確かに基準額28万円では、就労意欲を低下させるかもしれません。
また、働き方もフルタイムではなく、週に数日の勤務にし調整する場合もあるでしょう。
厚生年金の特別支給のある方には、確かにメリットがあります。
年金を受給しなければ、そもそも就労意欲を欠くことも働き方を調整する必要もありません。
厚生年金の特別支給が消滅することを考えれば、今回の措置は極めて限定的なものであり、将来的な就労意欲をもたらす政策ではないよう思われます。