赤字表現は不適切も金融庁の報告書は間違っていない
老後の30年間で生活費が約2千万円不足し、資産形成の自助努力が必要とする金融庁の報告書について、麻生太郎金融担当相は7日の閣議後会見で、「(年金だけでは)あたかも赤字ではないかと表現したのは不適切だった」と述べた。報告書に野党が反発していることを問われ、答えた。
金融庁は3日発表した「高齢社会における資産形成・管理」の報告書で、長寿化に伴って蓄えが寿命より先に尽きる可能性を指摘した。それに備え、積み立て投資など資産形成を国民に呼びかける趣旨だった。
~中略~
麻生氏の会見での主な発言は次の通り
公的年金は老後の生活設計の柱で、(政府は)持続可能な制度をつくっている。金融庁の報告書は、(年金が)月20万円のところを、豊かに暮らすため25万円にするには5万円足りない、65歳で(老後が30年間とすると)、だいたい2千万円という話だ。単純な試算を示しただけで、あたかも赤字だと表現したのは不適切だった。そうじゃない方もいっぱいいますので、意味が取り違えられるような書き方になっているのは不適切だったかなと思います。出典;朝日新聞デジタル 麻生氏「赤字表現、不適切だった」2千万円貯蓄問題
金融庁の報告書は「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿」を示したものです。
麻生氏の発言の中に、「豊かなに暮らすため」とありますが「平均的に暮らす」ことです。
同報告書の10頁にある厚生労働省資料のグラフから読み取れます。
麻生氏は、表現が不適切と言ったまでで、報告書の内容が不適切だとは言ってません。
報道では、
麻生氏は試算について「一定の前提で出した単純な試算」と言い、総務省の家計調査のデータを使った試算としています。
報告書を見る限り、データの出典元は第21回市場ワーキング・グループ厚生労働省資料となっています。
「一定の前提で出した単純な試算」ではなく、上記統計データーより5万円の不足を読み取り単純計算したものと推測されます。
問題の本質は何か?
現状、公的年金だけでは平均的な生活を営めない
現時点で、高齢者夫婦の年金収入は約21万円で、平均的な支出は約26万円です。
平均的な生活を営むには5万円足りません。
夫婦前提の年金制度
報告書では、単身世帯の増加や未婚率の上昇が指摘されています。
現行の年金モデルは、夫婦が前提で21万円程です。
内訳は、推定ですが夫15.5万円、妻5.5万円程と推測されます。
単純に単身世帯で考えると、夫はともかく妻は生活できません。
夫婦前提の年金制度であり、時代背景にマッチしていない点が懸念されます。
少子高齢化により給付水準が下がる
同報告書(案)では、
「少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい」との記載がありましたが、
報告書の段階で
「少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている」
と修正されています。
つまり、現行の年金制度では、マクロ経済スライドにより年金の給付水準が下がることを意味します。
最後に
今回の金融庁の報告書で、年金の問題点が自ら露呈されました。
そう言った意味では、国民にとって意義ある報告書だったと言えます。
ただ、現状ですら平均で月5万円不足する状況です。
現行制度では、年金給付水準も下がるのは明らかです。
一体いくら老後資金が必要なのでしょう?