報告書を受け取らない麻生大臣!民間有識者を冒涜する行為に唖然

年金問題

報告書は麻生大臣の諮問により民間有識者の手によって作られたもの

2019年6月11日

『老後に2000万円不足する』とした金融庁の報告書について、麻生財務大臣は11日、「正式な報告書としては受け取らない」と異例の決定をした。その理由について「年金制度自体が崩壊するかのごときに思われるような表現になっていた。世間に著しい不安とか誤解を与えている。これまでの政府の政策スタンスとも異なっている」と述べた。岸田政調会長も「極めてずさんなものであり、まともな政策議論に供しうるものではない。これが公になること自体大きな問題」と述べ、金融庁に対し報告書の撤回を求めた。二階幹事長は「我々は選挙を控えている。自分たちが置かれている立場をもっと真剣に考えなくてはならない。厳重に注意する」と抗議した。そもそもこの報告書は、麻生大臣の諮問を受けて作られたもので、金融や財政などに詳しい大学教授やエコノミストなど20人以上の委員が参加し、12回に及ぶ会議を経て取りまとめられた。主に資産運用について担当したセゾン投信・中野晴啓社長は「一人一人に事情は多様だから一概に当てはまるといえない。ざっくりこれくらいは最低でも足りなくなると想定して、一日でも早く一人でも多くの生活者に気付いて行動してほしい。これが報告書の趣旨と理解してほしい」と述べた。

出典:報道STATION 金融庁報告書 麻生大臣「受け取らない」 

物議を呼んでいる金融庁の報告書ですが、麻生大臣は「正式な報告書としては受け取らない」と表明しています。

この報告書は、麻生大臣の諮問を受けて作成されたにも関わらず、

蓮舫氏の「報告書を読みましたか?」の問いに、

麻生大臣は「冒頭しか読んでいない」と耳を疑う回答。

報告書を提出する際には、当然ながら麻生大臣のチェックが入っている訳ですが、事務方の説明の中に「公的年金だけでは2,000万円不足する」と言った旨の説明はなかったのでしょう。

この報告書は、金融庁の事務方が作った資料なら100歩譲って「報告書を受け取らない」ならまだしも、民間有識者が12回の会議を経て、取りまとめた資料であることを忘れてはいけません。

報告書の作成メンバーは民間有識者

座長 神田 秀樹  学習院大学大学院法務研究科教授
委員 池尾 和人  立正大学経済学部教授
上田 亮子  株式会社日本投資環境研究所主任研究員
上柳 敏郎  弁護士(東京駿河台法律事務所)
鹿毛 雄二  ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社特別顧問
加藤 貴仁  東京大学大学院法学政治学研究科教授
神作 裕之  東京大学大学院法学政治学研究科教授
神戸 孝   FP アソシエイツ&コンサルティング株式会社代表取締役
黒沼 悦郎  早稲田大学法学学術院教授
駒村 康平  慶應義塾大学経済学部教授
島田 知保  専門誌「投資信託事情」発行人兼編集長
高田 創   みずほ総合研究所副理事長エグゼクティブエコノミスト
竹川 美奈子 LIFE MAP,LLC 代表
佃 秀昭   株式会社企業統治推進機構代表取締役社長
永沢 裕美子 Foster Forum 良質な金融商品を育てる会世話人
中野 晴啓  セゾン投信株式会社代表取締役社長
野尻 哲史  合同会社フィンウェル研究所代表
野村 亜紀子 野村資本市場研究所研究部長
林田 晃雄  読売新聞東京本社論説副委員長
福田 慎一  東京大学大学院経済学研究科教授
宮本 勝弘  日本製鉄株式会社代表取締役副社長

オブザーバー 消費者庁  財務省  厚生労働省国土交通省 日本銀行 日本取引所グループ
日本証券業協会 投資信託協会 日本投資顧問業協会 信託協会 全国銀行協会 国際銀行協会
生命保険協会 (敬称略・五十音順)

民間有識者の方々は、名立たる方ばかりです。

セゾン投信・中野晴啓社長は

「一人一人に事情は多様だから一概に当てはまるといえない。ざっくりこれくらいは最低でも足りなくなると想定して、一日でも早く一人でも多くの生活者に気付いて行動してほしい。」

民間有識者の見解は、平均的な生活を営むのであれば、最低でも2,000万円は必要と言うよう受け止められます。

確かに一人一人の事情は多様ですが、平均的にみて足りないのは事実です。

国民にわかりやすく理解を促すのであれば、具体的な数値を提示した方が分かりやすいと有識者の方々は判断したのでしょう。

国民は「年金制度100年安心」の意味を誤解している

出典:厚生労働省 いっしょに検証!公的年金

 

公的年金は、簡単に言えば所得代替率50%の維持を目指す制度です。

詳しくは出典元をご確認下さい。マンガを用いてわかり易く説明しています。

年金制度が「100年安心」とは、言葉通り「制度自体が100年安心」と言うことで、公的年金だけで平均的な生活を営めるという訳ではないようです。

国会での野党の追及に、安倍首相は一貫して制度の説明を繰り返していました。

当然ながら民間有識者は、制度をしっかりと理解された方々です。

現状をわかり易く説明しようと、年金モデルにおける年金収入と平均的な支出を用いて、2,000万円という具体的でわかり易い金額を導いたのでしょう。

セゾン投信中野社長の言葉にある「一日でも早く一人でも多くの生活者に気付いて行動してほしい」

とは、国民が「100年安心」の呪縛に気付いて欲しいことを訴えているよう思えます。

麻生大臣が報告書を受け取らない行為は、民間有識者を冒涜する行為です。

「2,000万円の表現は不適切」との政府の弁明を素直に聞き入れるか?

「ざっくりこれくらい(2,000万円)は最低でも足りなくなる」との有識者の意見を聞き入れるか?

どちらを信じるかは明らかです。