2020年5月9日
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、勤務先が休業している人を支援するため、政府内では、特例として雇用保険の失業給付を行う案が出ていますが、政府・与党内には「企業が雇用の維持に責任を持たなくなる」といった懸念もあり、調整が行われています。
政府は、従業員を解雇せず、休業手当を支払うなどして雇用を維持した企業に対し、手当の一部を助成する「雇用調整助成金」の利用を促していますが、手続きが複雑で休業手当の資金がない企業は利用できないことなどから、企業側からは活用しにくいという声が出ており、申請は伸びていません。
このため、休業している勤務先からの手当を十分に受け取れない人が増えるおそれがあるとして、政府内では、特例として、こうした人たちを失業状態にあるとみなして、雇用保険の失業給付を行う案が出ています。
ただ、政府・与党内には「企業が雇用の維持に責任を持たなくなる」とか、「失業給付の申請を受け付けるハローワークの体制が十分ではない」といった懸念もあり、調整が行われています。
出典:NHK NEWSWEB 新型コロナで特例の失業給付案 政府・与党内には慎重論も
4月28日のニュース報道で、雇用調整助成金の支給は、わずか0.1%程。
相談件数はおよそ20万件に対し、実際に申請された数はおよそ2500件、支給が決まったのは282件と報道されていました。
4月20日の菅官房長官の会見では、
「審査から支給まで、原則として1か月になるよう厚生労働省で取り組んでいる」
と述べていますが、今の状況では確実に無理な話でしょう。
専門家によれば、制度上の問題点を6つ挙げられています。
2.オンライン申請が認められていない
3.5%の「売上」減少が必要という生産量要件
4.上限額が定額であること
5.社会保険労務士の連帯責任があること
6.実際に受給するまで相当の時間が掛かること
この中でも、申請業務の複雑困難さが最たる理由と考えられます。
ブログでも「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)令和2年4月24日現在」を紹介してますが、一般の経営者の方が、ハローワークの窓口に行って「おいそれと」手続きできる代物ではありません。
手続きが煩雑な件は、当初から指摘されていましたが、政府は聞く耳を持ちませんでした。
「雇用助成金の更なる拡充」といったフレーズで、助成率のアップ等をアピールしてきましたが、そもそも使えない制度を拡充しても意味がありません。
今になり、政府では特例として雇用保険の失業給付を行う案が出ていますが、この場に及んで「雇用調整助成金」に見切りをつけるのは、余りにも遅すぎる対応かと思われます。
政府・与党の懸念として、
「企業が雇用の維持に責任を持たなくなる」→雇用維持の責任以前に、企業の死活問題です。
「失業給付の申請を受け付けるハローワークの体制が十分ではない」→雇用調整助成金でもハローワークの体制は不十分です。
何よりも、制度自体(提出書類等)を簡素化し、オンライン等で簡単に申請でき、申請される側も処理効率のいい方法にして欲しいものです。