就職氷河期世代限定の求人1ヵ月377件も数字では見えない求人の質的問題

独り言

2019年11月5日

いわゆる「就職氷河期」世代の正規雇用を増やすため、厚生労働省が特例としてハローワークでこの世代に限定した求人を認めたところ、1か月余りで377件の求人が寄せられたことがわかりました。

「就職氷河期」世代はバブル崩壊後、新卒の就職が特に厳しかった時期に社会に出た人たちで、政府はこの世代の就職支援を進めています。

この取り組みの一環で厚生労働省がことし8月下旬から求人に年齢制限を設けることを禁じた法律の運用を緩和し、ハローワークに限って、この世代に限定した求人を認めたところ、ことし9月末までの1か月余りで377件の求人が寄せられたということです。

産業別に見ますと、最も多いのが運輸業で45件、次いで卸売業・小売業が41件、製造業が23件などとなっています。

また、全国のハローワークでは就職氷河期世代のための専門の窓口の設置が進んでいて、今月1日までに宮城県、埼玉県、愛知県、奈良県、大阪府、兵庫県、大分県、沖縄県の8つの府県で設置されたほか、今月中旬には東京都と京都府でも開設されることになっています。

厚生労働省は「就職氷河期の世代への一定のニーズがあることがわかった。今後も求人が増えるよう努めていきたい」と話しています。

出典:NHK NEWSWEB「就職氷河期」世代限定の求人 1か月余りで377件

 

企業が求人や採用を行う際、「年齢制限」を設けることが禁じられています。

雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないとされ、年齢制限の禁止が義務化されました。

今年8月、ハローワークに限り特例として、求人票に対象の年齢を「35歳から54歳まで」と記載することができるようになりました。

「35歳から54歳まで」と年齢制限が記載された求人は、一目で就職氷河期を対象とした求人とわかります。

ただ、この年齢制限を表記した場合、以下の条件の者を雇用する必要があります。

・この1年間、正社員としての雇用がない人
・非正規雇用の経験が多く安定した就労の機会が乏しい人
・雇用の期間を設けず、同じ職での経験を条件としない

求人側の最大のメリットは、国からの助成金です。

大企業には総額50万円、中小企業には総額60万円が支給されます。

1ヵ月で377件が多いのか少ないのか?

状況は分かりませんが、そもそも求人を出していた企業が、年齢制限を追加記載する場合もあることでしょう。

厚生労働省は「就職氷河期の世代への一定のニーズがあることがわかった」と楽観的な意見を述べていますが、果たして雇用に繋がるか疑問があります。

厚生労働省が7月に公表した有効求人倍率は1.59倍で、数字的に問題なく思われます。

しかしながら、記事にもあるように運輸業、卸売業・小売業、製造業等は「なりて」が少なく慢性的な人材不足に悩む企業が多いことでしょう。

先日、宝塚市で就職氷河期の世代を対象とした正規職員の募集をしたところ、定員3名程度に対し1,800人以上の応募がありました。倍率は600倍以上の狭き門です。

この事実は何を意味しているのでしょう。

就労意識の高い就職氷河期世代の方は、政府が対応する以前から求人に対するアンテナを張り、転職などの活動をしています。

それでも自分にあった就職先がなく、現状に留まっている方もいることでしょう。

就職氷河期世代が望む職種の求人が少ないことを物語っています。

1ヵ月377件とか有効求人倍率1.59倍とか、数字では見えない現実が隠れているものと思われます。

厚生労働省には数的な求人数だけでなく、質的な面も考慮した求人を提供すべく「企業への積極的な呼びかけ等」に尽力して欲しいものです。