2019年12月26日
来年の春闘に向けてトヨタ自動車の労働組合は、ベースアップに相当する賃上げの額が人事評価に応じて差がつく新たな方法を提案する方向で調整を進めていることが分かりました。一律での賃上げの要求を見直すもので、こうした動きがほかの企業にも広がるか注目されます。
新たな方法は、基本給を一律に底上げするベースアップを行ってきた原資の総額を確保したうえで、5段階の人事評価に応じて個人に配分し、賃上げの額にさらに差をつけるもので、トヨタ自動車の労働組合は、来年の春闘で提案する方向で調整を進めているということです。
この提案では、中堅クラスで人事評価の低い社員だと、ベースアップがゼロになる可能性もあるとしています。
トヨタのことしの春闘では、中小を含むグループ各社がトヨタのベースアップの水準にとらわれない柔軟な交渉を促したいとして、労使双方がベースアップの妥結額を非公表とし、経営側は、勤続年数などに応じた一律での賃上げに否定的な考えを強く示していました。
自動車業界が100年に1度の大変革期と言われる中、トヨタの労働組合としては、評価の高い人に重点配分することで社員の意欲が高まるとしていて、一律での賃上げの要求を見直す動きが、ほかの企業の労使交渉にも広がるか注目されます。
出典:NHK NEWSWEB トヨタ労組 人事評価に応じて賃上げに差がつく方法を提案へ
これまで労働組合は、なぜベアを春闘で要求してきたのでしょう。
ベアとは、「ベースアップ」を省略した言葉で、基本給の水準を上げることです。
年齢や勤続年数に応じて基本給が上がる「定期昇給」とは異なり、給与水準そのものを引上げる行為です。
労働組合が「ベア」を要求してきたのは、景気による物価上昇等に賃金が対応するよう、労働者の生活を守る観点で要求してきました。
ベアは、景気による影響を大きく受けます。
昭和の高度経済成長やバブル期など、好景気の物価上昇に合わせ組合はベアを要求してきました。
2000年代に入り、景気の低迷やデフレ期には、組合はベアを要求しましたが、企業側はベア要求を拒否するようになります。
企業側から見れば、景気が悪く物価上昇等がないのであれば、ベア要求を受け入れる必要はないことでしょう。
例えば、今年は消費増税もあり実質的な物価上昇と言えます。
今回の報道では、トヨタ労組は評価の高い人にベアを重点配分することで社員の意欲が高まる
とし、会社側の考えを受入れ姿勢を見せています。
「中堅クラスで人事評価の低い社員だと、ベースアップがゼロになる可能性もある」
従来のベアのあり方を考えれば、組合としてあってはならないことでしょう。
給与水準の高いトヨタ労組は、本来のベアの意味合いを見失ったよう思われます。
肯定的な言い方をすれば「新たなベアのあり方」を示したとも言えます。
一律での賃上げの要求を見直す動きが、ほかの企業の労使交渉にも広がるか?
給与水準が高ければ、トヨタのようにベアの配分を見直すのもいいでしょう。
ただ、給与水準が低ければ、やはり従来のベアの考え方を踏襲すべきと思われます。