今回の台風19号の影響で、武蔵小杉エリアに林立するタワマン被害が注目されています。
マンションの地下に設置された電気室が水没し、電力供給が不能となったため停電と断水が続き、エレベーターやトイレが使えない状況に陥り、思わぬ脆弱性を露呈することになりました。
タワマンは災害に強い?
建築基準法では、60m以上の建築物を「超高層建築物」とし、階数での分類はしていませんが一般的に、20階以上の住居用の超高層建築物を「タワーマンション(タワマン)」と呼ばれています。
タワマンは厳しい建築基準法をクリアーした建物であり、例えば構造強度に関してはコンピューターシミュレーションを行い、構造体の安全性を確認した上で、国土交通省の認定を受けることが義務付けられています。
地震の対策として免震構造や制震構造等、震度6強から7クラスの地震でも倒壊しないよう建物設計されています。
津波や洪水等に対しても、建物の基礎部分が地盤に杭打ちされており、一般的な建物よりも倒壊したり流されたりと言った心配はないことでしょう。
火災に対しても、消防法で11階以上にはスプリンクラーの設置が義務付けられ、一定の延べ床面積以上の場合、原則として屋内消火栓の設置が義務化され、延べ床面積が500m2以上の場合は、自動火災報知設備の設置が必須です。
また、建築基準法では消防隊が消防活動に使えるよう、高さ31mを超える建築物に非常用エレベーターの設置を義務付けています。
「建築物」と言った観点では、タワマンは災害に強いと言えるでしょう。
「電気」と「水道」が一体化されたライフライン
ライフラインとは「電気」「水道」「ガス」が挙げられます。
戸建てであれば、一般的に電気・水道・ガスは分離しています。
電気が使えなくても水が使えたり、点火方式が電池式等のガスコンロが使えたりします。
集合住宅でも2F建てのアパートなら同じことが言えます。
建物が3F以上となると、水道の直圧では水を快適に使用できません。
快適に使用するにはポンプが必要となり電気が必要となります。
この理由で、ライフラインである「電気」と「水道」が一体化されてしまいます。
これはタワマンに限られたことではありませんが、高層建物特有の欠点は、高層階になればなるほどエレベーターがなければ生活が困難になります。
今回の台風でのタワマン被害者の方も、ホテルに仮住まいされる方が多く存在します。
その場所で生活するには最低限、水と食料を持ち込む必要性があり、それは高層階であれば多大な労力となります。
電気の明かりもなく、食料備蓄もできず、トイレやシャワーの使用ができなければ、雨風をしのぐ場所でしかありません。
生活の拠点としての機能が失われれば、階段を昇り降りする価値はないことでしょう。
何階以上とは言えませんが、電気がなければ住めないと言っても過言ではありません。
情報通信に関しても、タワマンには問題が潜む
従来のライフラインに加え、スマホ等の「情報通信」も欠かせないライフラインの一つと言えます。
一般に、高層階になれば携帯などの電波の入りが良くないと言われています。
タワマンによっては、携帯電話の電波を受信しにくいことから、マンション内に小型基地局が組み込まれているマンションもあります。
スマホ等が使えないのは、人によっては住めない理由の一つになるかもしれません。
まとめ
タワマンは建物構造面から災害自体には強さを発揮することでしょう。
しかしながら、災害後に電源を喪失すれば高層階程、生活拠点としての役割を果たせなくなります。
今回の武蔵小杉エリアにおけるタワマン被害は、周辺の電力供給に問題なく、ホテル住まいと言う選択肢もありますが、もし北海道のブラックアウト(大規模停電)のようなケースが長期間続けば、避難所か、車があれば車中泊か、又は不便なタワマン生活の選択となることでしょう。
建物自体に損傷がなくても、電気がなければ高層階での被災生活が営めない理由で、避難所生活を余儀なくされる可能性があります。
不便を解消するには最低でも、給水設備とエレベーターが稼働する自家発電設備等のバックアップ電源が必要かと思われます。