2019年9月9日
高齢化の進展に伴い、財政悪化が見込まれる医療保険制度を維持するため、健保連=健康保険組合連合会は、75歳以上の後期高齢者の病院などでの窓口負担を、今の原則1割から2割に引き上げることなどを求める提言をまとめました。
大企業の従業員らが加入する健康保険組合で作る健保連=健康保険組合連合会は、医療保険制度の見直しを求める提言をまとめました。
この中では、いわゆる「団塊の世代」が75歳の後期高齢者になりはじめる2022年から、医療費が膨らみ保険財政が急激に悪化するとしています。
このため、世代間の公平性を保ち、制度を維持するためには負担増を伴う改革は避けられないと指摘しています。
具体的には、75歳以上の後期高齢者の病院などでの窓口負担を、今の原則1割から、低所得者に配慮しつつ原則2割に引き上げるよう求めています。
また提言では現在、現役世代の保険料収入で賄われている一定の所得がある後期高齢者の医療費の財源について、現役世代の負担を和らげるため、ほかの後期高齢者と同様、5割を公費で賄うよう求めています。
健保連は近く提言を発表し、政府の社会保障制度改革の議論に反映させたい考えです。
出典:NHK NEWSWEB 健保連 75歳以上の窓口負担 2割に引き上げ提言へ
「後期高齢者医療制度」は、平成20年(2008年)4月より従来の「老人保健制度」が廃止され創設されました。
制度施行当時、「後期高齢者」という名称に対し多くの批判を集めました。
時の福田内閣では、「長寿医療制度」という通称がありましたが、今では全く使われていません。
少し時代を振り返ってみましょう
その昔、
1973年~1983年、老人医療の自己負担が「無料」の時代がありました。
1983年~数百円程度の定額負担となります。
2002年~度重なる定額負担金額を見直し1割負担(上限あり)となりました。
この時に、老人保健の対象年齢も70歳から5年掛けて75歳に引き上げられることが決まりました。
後期高齢者医療制度(2008年~)
75歳(寝たきりなどの場合は65歳)以上の方が加入する独立した医療制度で、対象となる高齢者は個人単位で保険料を納めます。
後期高齢者医療制度の財源は、
公費 ~約5割(国4:都道府県1:市町村1)
後期高齢者支援金~約4割
高齢者の保険料 ~約1割患者負担(原則1割、現役並み所得者3割)
「後期高齢者支援金」の中に、「健康保険組合」が関与します。
(その他、国民健康保険、協会けんぽ等が支援金を出しています)
独立した医療制度でありながら、「支援金」という名目で現役世代の保険料収入が負担されています。
会社を定年すれば、多くが「国民健康保険」に加入することになります。
健康保険組合は大企業の従業員らが加入するもので、75歳以上の加入者はほぼいません。
健康保険組合から見れば、大企業の現役世代から保険料を絞り取り、高齢者へ回すのにも限界であることを訴えているのでしょう。
なぜ、高齢者の窓口負担を増やすよう、政府に提言するのでしょう。 単に、支援金を出すのが厳しい現状を政府に伝えるだけでいいのでは?
後期高齢者医療制度の運営主体は、都道府県ごとに設けられた各市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」です。運営主体は地方公共団体であり政府側と言っていいでしょう。
健康保険組合連合会が、高齢者の窓口負担を増やすよう政府に提言するのは「お門違い」に思えます。
政府に提言するよう言われているのでしょうか?
高齢者の負担を増すことは、「年金問題」ともリンクします。
年金は財政検証からも明らかな通り、このままの年金制度では確実に目減りします。
所得代替率によっては、生活保護費を下回る可能性もあります。
「健康で文化的な最低限度の生活」が営めない中、高齢者負担を増すことは「死活問題」です。
生活保護者は、「保険料」が免除され且つ「医療費」が無料です。
「年金生活者」と「生活保護者」の「整合性」にも問題がでてきます。
そんな中、高齢者の負担を増やすことを安易に政府に提言するのは「言語道断」ではないでしょうか。