消費税は目的税、景気対策に使っていいのか?使途は法で定められている

独り言

2019年09月01日

消費税率10%への引き上げまであと1カ月。社会保障の充実を目指した増税で、年4.6兆円の新たな国民の負担が生まれる。政府はキャッシュレス決済時のポイント還元などで負担軽減を図り、景気に「十二分な対策」(安倍晋三首相)を講じたと強調する。ただ、米中対立をはじめ海外経済のリスクは増大。消費税増税が景気の下押し圧力になる不安は拭えない。
現行の8%から2%分の増税で見込まれる本来の負担増は5.7兆円だが、飲食料品などの税率を据え置く軽減税率の導入により、負担は1.1兆円軽くなる。
政府は増税に伴う歳入分のうち、幼児教育の無償化や医療機関に支払われる診療報酬の補填(ほてん)に3.2兆円を振り向ける。急速な少子高齢化が進む日本にとって、社会保障制度の改革や充実は急務だ。
加えて、ポイント還元や低所得者向け「プレミアム付き商品券」の発行などに2兆円規模を充てる。合計すると関連歳出は5兆円を超え、税率引き上げに伴う増収分を上回る。2014年4月の前回増税後、消費低迷が長引いたため、政府は二の舞いを避けようと必死だ。
一方、米中貿易摩擦などで世界経済の不透明感は高まっている。内閣府の消費動向調査によると、消費者心理の明るさを示す消費者態度指数が8月まで11カ月連続で悪化し、景気は堅調とは言えない。東短リサーチの加藤出社長は「世界経済の減速懸念が強まれば、消費税増税のマイナス面が増幅される」と指摘。日本経済の落ち込みも想定される。
首相は、海外経済を念頭に「リスクが顕在化する場合には機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と追加経済対策に含みを持たせている。ただ、さらに歳出が膨らめば「何のための消費税増税だか分からなくなる」(財務省幹部)との声も多い。消費税増税は「アベノミクス」の先行きにとって重しとなりそうだ。

出典:時事ドットコム 4.6兆円増税、景気に下押し圧力=政府「十二分な対策」強調

 

10月より消費増税が行われますが、消費税2%分の増税は金額にして5.7兆円の国民負担です。

軽減税率が導入され、これにより1.1兆円の負担額が減り実質4.6兆円の負担となります。

政府は増税分の内、幼児教育の無償化や医療機関に支払われる診療報酬の補填に3.2兆円を振り向けると公表しています。

この3.2兆円は、「消費税の目的」に合致した歳出です。

残り1.4兆円にもかかわらず、増税後の消費低迷を懸念し2兆円を景気対策に充てようとしています。

2兆円を具体的に言えば、

「キャッシュレス決済時のポイント還元」
「プレミアム付き商品券(低所得者向け)」

消費税の2%分の枠を超えての景気対策であり、せっかくの増税も赤字です。

 

軽減税率1.1兆円も、景気対策の一環です。

そう考えれば、3.1兆円が景気対策といえます。

2%増税分の5.7兆円の内、その5割以上が景気対策に使われることになります。

政府は「十二分な対策」と自画自賛しています。

ここまで景気対策に税金を投入し、逆に成果が出なければ責任を取って欲しいものです。

 

疑問なのは、目的税である消費税を景気対策に使うことです。

財務省のホームページには、

○消費税収の使途の明確化

(消費税法第1条第2項)
消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

出典:財務省 消費税の使途に関する費用

消費税収の使途は法律に明記されています。

景気対策に使ってもいいのでしょうか?

仮に使っていいものであっても、

国民から2%追加徴収した消費税の半分以上を景気対策に充当するのはナンセンスな話です。

 

消費者態度指数は8月までの11カ月連続で悪化しています。

・働き方改革による残業代の減少
・金融庁2000万円報告書問題
・年金財政検証結果(経済成長率が低ければ所得代替率50%維持が困難)

等、心理的に明るい話はありません。

加えて消費増税となれば、消費意欲の更なる低下は避けられないことでしょう。