北海道砂川市で、市の依頼を受け警察立会の下、ライフル銃で熊を駆除したハンターが、公安委員会に許可のない発砲として「鳥獣保護違反」の疑いで書類送検されました。
書類送検は不起訴処分になりましたが、その後ハンターはライフル銃の所持許可を取消されるという、不可解な事件が発生しました。
ハンターに落ち度はあったのか?
ニュース報道では、
発砲方向には二軒の民家があり、一軒は在宅で家の安全な場所で待機するよう要請し、もう一軒は不在でした。
ハンターは斜面にいる熊を撃っており、弾丸は民家に到達することなく斜面に当たることを依頼主である市及び警察官の安全確認の下、ハンターは発砲し熊を射止めています。
警察官は立ちあった時点で同意では?
警察側は「現場での発砲を同意した事実はない」と主張しています。
発砲の同意はなく、安全確認をしただけということなのでしょうか?
法に抵触する恐れがあるなら、安全確認や立会などせずハンターを制すべきです。
銃は警察官も所持している
国民の安全を守る警察ですが、熊が出没したからと言って警察官が熊を射殺したという話は聞きません。
人を襲っている等、明らかに人命に関わる状況であれば発砲するのでしょう。
警察官にも銃の使用には制限があります。
ハンターも当然ながら銃の使用には制限があります。
使用してもよい「場所」や「時期」があります。
警察官が立ちあったとしても、この制限に違反している点を公安は指摘したのでしょう。
なぜ熊を射殺するのか?
今年、札幌市南区でも熊が8日間連続で出没し市民を脅かしました。
砂川市の場合と違い住宅街での出没です。
市の依頼を受けた北海道猟友会のメンバーと警察官、市職員ら十数人が出動して追跡。姿を見失った地点から約400メートル南の山中でヒグマを発見し射殺しました。
市街地での発砲はなく、熊を山中に追いやっての射殺となりました。
ハンターが銃を使用してもいい場所なのかは、明らかにされていませんが民家や人けのない場所で射殺しています。
熊の射殺が報道された直後、札幌市には約300件程の抗議が寄せられました。
「捕まえて動物園に移して」
など、殺処分したことへの抗議が主です。
その意見の大半は道外からのものと報道されています。
住民の意見は、
「もっと早く対応して欲しかった」
など、殺処分の抗議とは温度差のあるものと思われます。
また「札幌市民の命はクマ以下」なのかと「熊射殺への抗議」に対する抗議もありました。
札幌市は
当初は「箱わな」の設置を試みましたが効果がなく、麻酔銃での捕獲も検討していました。
仮に麻酔銃で捕獲し山の中に返しても、農作物の味を知った熊は、山を下り「再出没」の可能性がある旨を懸念しています。
また、捕獲後の受け入れ先(動物園等)を見つけることが困難なため、殺処分に至ったと説明しています。
さっぽろヒグマ基本計画
札幌市は平成29年3月に策定した「さっぽろヒグマ基本計画」というマニュアルに沿って行動しています。
熊についての危険度は4段階で判断され、殺処分に至った熊の危険度は4段階中2番目に高い「段階2」と判断されています。
段階:人間に対するヒグマの行動姿勢
0:ヒグマが人間を恐れて避けている状態
1:ヒグマが人間を恐れず避けていない状態
2:ヒグマが地域社会に経済被害をもたらし、被害の拡大が懸念される状態
3:ヒグマが人間に積極的につきまとう、又は人間を攻撃する状態
ヒグマによる被害の防止とヒグマとの共生を両立するために、ヒグマの市街地侵入抑制策を中心とした未然防止の取組と出没時の対応を適切に行うことを目的としています。
ヒグマの習性や行動などの分析もされ、危険度レベルによっての対応方法等がまとめられた「充実したマニュアルだと」評価できます。(マニュアルはこちら)
しかしながら、いざ市街地に出没した際は、1週間以上も市民を脅かす熊の対応に苦慮しました。
入念な準備があっても、神出鬼没な熊に対応するのは本当に難しいものです。
最後に
砂川市の件に関しては、事前に市や警察が十分な対応策を練っていたのか疑問です。
依頼されたハンターだけが処分の対象となり、結果的にライフル銃の所持許可を取消され、ハンターとしての仕事を失うことは厳しい処分と思われますが、ハンターとしての域を超えた行動だったものと思われます。
ただ、市・警察・ハンターの三者が、「人命第一」に行動したことは確かなことです。
そういった面を考慮すれば、ハンターだけへの厳しい処分は、やはり理不尽な感があります。