2020年6月30日
心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人たちが、就職活動で不利益を受けているとして、履歴書の性別欄の廃止を求めるおよそ1万人分の署名を、NPO法人が経済産業省に提出しました。
署名を提出したのは、労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」などで、ことし2月からインターネット上で署名を呼びかけたところ、29日までに1万418人分の署名が集まりました。
心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人たちは、就職活動の際に、履歴書に記載された性別と外見が異なっているとして、面接で差別的な発言をされたり内定を取り消されたりするケースがあるということです。
一部の企業や地方自治体などで性別欄を廃止する動きが広がり始めていますが、NPO法人では、一般的な履歴書には性別欄が残ったままだとして、廃止を求めるおよそ1万人分の署名を経済産業省に提出しました。
署名の提出後、記者会見を行ったNPO法人の今野晴貴代表は、「履歴書に性別欄があることは、トランスジェンダーであることを強制的に周囲に広めることにつながり、必然的にパワハラになることを知ってほしい」と話していました。
記者会見に同席したトランスジェンダー当事者の佐藤悠祐さんは、「性別欄を記入せず履歴書を提出したところ、強制的に書かされたうえで、見た目と性別が異なることに対して根掘り葉掘り聞かれてつらい思いをした。早く履歴書の性別欄をなくしてほしい」と話していました。
出典:NHK NEWSWEB「履歴書の性別欄廃止を」経産省に1万人分の署名提出
男性か?女性か?
男女雇用均等の考えからも、就活の場で問われることは、あってはなりません。
一般に就活において「性別欄」は不要と考えていいでしょう。
廃止を求めることで、トランスジェンダーの不利益を世に知らしめることは、署名活動として意義あるものと思います。
男女均等な採用選考ルール
厚生労働省が配布する「男女均等な採用選考ルール」というパンフレットがあります。(以下抜粋)
また、業務上の必要性など、合理的な理由がない場合に、募集・採用において労働者の身長・体重・体力を要件とすること、労働者の募集・採用、昇進、職種の変更をする際に、転居を伴う転勤に応じることを要件とすることは、間接差別として禁止されています(法第7条)
①募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること。
②募集・採用の条件を男女で異なるものとすること。
③採用選考において、能力・資質の有無等を判断する方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。
④募集・採用に当たって男女のいずれかを優先すること。
⑤求人の内容の説明等情報の提供について、男女で異なる取扱いをすること
求人において、男女のいずれかを表す名称で募集職種を表示したり、男女のいずれかを優遇しているような表現をしてはいけません。
・「ウエイター」「○○レディ」など
・「男の意欲が勝負」「女性向きの職種」など
・男女のいずれかを採用する方針で、写真やイラストにおいて、一方の性に偏った職場を強調する等の表現をすること。
性別欄廃止で不利益はなくなるのか?
しかしながら、就活において性別欄を廃止することで、トンランスジェンダーの不利益が無くなるかは疑問です。
履歴書であれば、「氏名」により男性か女性か概ね検討がつく場合があります。
性別欄が無い為に、逆に確認されるケースが増えるかもしれません。
企業の採用時に性別を聞くことが違法であれば別ですが、採用側としては確認したいところでしょう。
男女を示さないことで、就職後に問われることもあるでしょう。
例えば、健康保険証の発行には男女が問われ、企業に義務付けられた健康診断においては男女別れて受診するのが一般的です。男女別れたトイレや休憩室等、対応が必要となる場合もあります。
あたり前に存在する個性
生まれた性別を隠すことは、「個性」を隠すようにも思えます。
男に生まれて男の心や体では個性がありません。
LGBTの割合は12~13人に1人と言われています。(正確なところは不明)
もし、これだけの割合で存在するのであれば勇気がいることと思われますが、トランスジェンダーに限らず、性的マイノリティを隠すことなくオープンにしていった方が、より認知度は上がるよう思えます。
履歴書の性別欄に性別を明記して、容姿を見て性に関わる質問をするような企業であれば、何もそんな企業に就職する必要はありません。
単に履歴書の「性別欄」廃止の問題と考えれば、
就活に限定されており、男女雇用均等の考えからすれば廃止は容易に思えます。
「同性婚」すら認めない日本で、どんな判断となるか注目されます。