ドーナツ裁判の無罪確定!無罪の者を起訴した検察に責任はないのか

独り言

2020年8月11日

長野県の特別養護老人ホームで、ドーナツを食べた入所者が死亡して、准看護師の女性が業務上過失致死の罪に問われ、2審が無罪の判決を言い渡したことに対し、東京高等検察庁が上告しないことを明らかにしました。准看護師の無罪が確定することになります。

長野県安曇野市の特別養護老人ホームに勤める准看護師の60歳の女性は、平成25年、おやつの確認を怠り、ドーナツを食べた85歳の女性を死亡させたとして、業務上過失致死の罪で起訴されました。

2審の東京高等裁判所は先月28日、「ドーナツを提供したことが刑法上の注意義務に反するとはいえない」として、1審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡しました。

この判決について、東京高等検察庁の久木元伸次席検事は11日、
として、上告しないことを明らかにしました。

これにより、准看護師の無罪が確定することになります。

今回の裁判は、准看護師が有罪とされると介護の現場が萎縮しかねないとして、医療や福祉に携わる全国の関係者の注目を集めていました。

出典:NHK NEWSWEB 長野 特養老人ホームのドーナツ裁判 准看護師の無罪確定へ

簡単な経緯

事の始まりは、2013年12月12日の午後3時過ぎ、特別養護老人ホームあずみの里 で、入居者が17名が9つのテーブルを囲み、おやつを食べたことに始まります。

その場で85歳の女性入居者が、ぐったりとし意識を失い職員は異変に気づき、救急処置を行い119番通報します。

駆けつけた救急隊員による救急処置が行われ、松本市内の病院へ搬送され、意識が戻らないまま翌年1月16日入院先の病院で亡くなりました。

ご遺族と施設との示談も成立していましたが、警察は刑事事件としての立件を前提として動きだします。

その後、85歳の女性入居者に、ドーナツを食べさせた職員(准看護師)が、「業務上過失致死罪」で起訴されます。

一審の裁判では、「注視義務違反」という曖昧な訴因にはじまりましたが、途中で訴因変更され、「間食形態確認義務違反」と称するものへと変わりました。

簡単に言えば、

「食事中の入居者をきちんと見ていなかった」という観点から「ゼリーではなくドーナツを食べさせた」という論点へと変わりました。

主な争点は3つで、

〇そもそもドーナツを詰まらせて窒息したのか?

〇注視義務違反が認められるのか?

〇おやつ形態変更の確認義務違反が認められるのか?

2019年3月25日、長野地裁は検察の求刑どおり罰金20万円という有罪判決を言い渡しました。

2020年7月28日、東京高裁は「ドーナツを提供したことが刑法上の注意義務に反するとはいえない」とし罰金刑とした1審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡しました。

本日、「判決内容を十分に検討したが、適法な上告理由を見いだせなかった」とし、検察は上告しないことを明らかにし無罪が確定しています。

介護現場における注視義務とは

この事件、もし家庭内で起こったらどうなるのでしょう。

例えば、夫婦、子供2人、祖母の5人家族だったとしましょう。

3時のおやつにと、祖母の部屋に妻がドーナツを差し入れました。

6時の夕飯時になっても、祖母が食卓に現れないので、祖母の部屋を見にいったら意識を失っていました。

これなら事故として扱われることでしょう。

妻が祖母の部屋で、のどを詰まらせないかとドーナツを食べ終わるまで、見守る義務はありません。

介護現場に、家庭内以上の注視義務を求めるのは、如何なものかと思われます。

お正月等、お餅を喉へ詰まらせ亡くなる老人がいます。

老人にお餅を与え、本人の意思で食し亡くなれば、家族の過失となるのでしょうか。

毎年、お餅を楽しみに食べる老人が、その時にたまたま喉を詰まらせるのは、本人の問題と捉えられるでしょう。

そもそも警察や検察が、注視義務違反で立件したことに誤りがあるよう思えます。

家庭以上のリスク管理を介護現場に求めるのは実に酷だと思われます。

ドーナツとゼリー

どちらも老人が食べてはいけないものではありません。

咀嚼に問題があれば、どちらも窒息する可能性はあります。

「こんにゃくゼリー」においても窒息事故は相次いで起きています。

ドーナツとゼリー、どちらがリスクが高いのか?

検証されているのでしょうか?

口に入れる以上、老人であればどちらも窒息リスクはあります。

「間食形態確認義務違反」

なんとも曖昧な義務違反のように思えます。

検察への不信

「判決内容を十分に検討したが、適法な上告理由を見いだせなかった」

検察は上告しない旨を明らかにしました。

国民から見れば、上告しないのであれば冤罪のように思えます。

准看護師の女性は無罪判決後、

「真実が証明されました。6年半という長い時間、本当に支えていただきました。検察には真実を受け入れてほしいと思います」

と涙を浮かべながら述べました。

一個人を、国家権力でここまで追いつめた罪は、謝罪ではすまない事態ですが、検察は謝罪すらしないことでしょう。

起訴や不起訴の判断は、検察だけに許されたものであり、不起訴になれば裁判すら起こすことができません。

起訴すべきを不起訴にし、不起訴にすべきを起訴する。

今回の事件は、そんな検察への不信へとつながる事例となることでしょう。