宅地や商業施設の開発が制限される「市街化調整区域」に動物園を無許可で開設したとして、札幌市南区の「ノースサファリサッポロ」の運営会社に対し、市が都市計画法に基づく施設の除却命令を出す方針を固めた。
飼育施設や事務所など全ての建物が対象で、市によると、動物園への除却命令は全国初とみられ、事実上の閉園命令となる。
出典:読売新聞より抜粋
ノースサファリサッポロとは
ノースサファリサッポロは、札幌市南区豊滝にある体験型の動物園をメインに、ジップラインやミニバンジー等のアクテイビティ施設や、グランピング施設(宿泊施設)を有する複合施設です。
2005年7月に北海道初のサファリパークとしてオープンしました。
およそ140種の動物が飼育されており、動物とのふれあい、距離の近さをテーマに展示されています。
「日本一危険な動物園」といわれる理由は、
入園時の免責事項には、事故及びケガに対し自己責任で入場する旨が記載されており、展示場所によっては「誓約書」に署名しなければ入場できないエリアもあるからです。
誓約書に署名しないと入場できないエリアには、ミズオオトカゲやビルマニシキヘビ等の危険動物の至近を通ったり、ピラニアの水槽、ワニ展示場の上に設けられた一本橋を渡る等、危険と隣り合わせの展示が存在します。
テレビや旅行雑誌等で紹介されたこともあり、知る人ぞ知る札幌の穴場スポットです。
今回の措置に至るきっかけ
昨年の11月3日、
「アザラシと泊まれるコテージ」に宿泊した利用客がX上に画像付きの投稿をしました。
シングルベッドが2つ並ぶ客室から、窓ガラス越しにアザラシが見え、壁に覆われた狭いスペースにいるアザラシは客室の方を向き、客は目と鼻の先まで近づくことができます。
投稿主は、アザラシと過ごせたことを喜んでいたものの、このコテージのアザラシがいるスペースが狭く、また利用客にずっと見続けられているのは、かわいそうだと物議を醸し閲覧数は2日で1億アクセスを超えました。
その後、札幌市に500件以上の苦情が寄せられたとの報道もあります。
あるマスコミは、ノースサファリサッポロが過去5年間で9頭中7頭のゴマフアザラシを死亡させたのでは?
との疑いを報道しており、運営会社であるサクセス観光に確認するも、
「たしか老衰で一頭だけだったかな」
と要領を得ない回答に、運営会社の管理能力に対する疑問を投げかけています。
以前からSNS上では、利用客や動物愛護団体からの批判が絶えず、フクロウ等の鎖での拘束や狭く不衛生な檻等、動物福祉の面で問題があることが指摘されていました。
今回の札幌市の措置について
市によると、園の敷地は全て市街化調整区域内にあるため、飼育施設などの建設には事前許可が必要となっている。
市は開業前の04年10月、無許可で建設工事が行われていることを確認し、運営会社「サクセス観光」に許可を得るように行政指導した。
だが、同社は応じることなく建設を進めて開園。
施設の拡張も続け、建築物は150棟ほどに増えた。
この間、市は文書や口頭で再三指導をしてきたが、同社は「改善する」と回答するものの従ってこなかった。
市が強硬な手段が必要だと判断した背景には、同社が長年にわたり行政指導を無視してきたことのほか、園に対する厳しい市民感情を考慮したとみられる。
市幹部によると、同社に除却命令の用意があることを伝達し、その上で言い分を聞く「聴聞」の手続きを経て最終的な結論を出す。
同社は開業当初、動物園を営むのに必要な「第1種動物取扱業者」の届け出もしていなかった。
市は開業直後に把握し、手続きを取るよう行政指導した。
06年5月に届け出を受理した後は登録の更新を繰り返し、園内にフードコートや宿泊施設が造られると、食品衛生法や旅館業法に基づく営業許可も与えていた。
都市計画法に抵触する恐れを把握しながら、事後的に動物取扱業者の届け出を受理した経緯について、市側は「すでに動物が飼育・展示され、動物保護の観点から必要な措置だった」と説明する。
登録の更新、宿泊施設などの営業を認めた理由については「都市計画法とは別の法令に基づく分野で、当該の法令違反がない限りは登録更新や許可申請を拒めなかった」としている。
出典:読売新聞より抜粋
今更の札幌市の判断に唖然
札幌市に言い分はあるものの、およそ20年もの長期に渡り違法状態を黙認してきました。
今更、都市計画法に抵触している理由で、事実上の閉園命令は釈然としません。
マスコミ報道等で人気のスポットとして紹介されている時は黙認し、20年も経ってからSNSで批判が殺到しての措置は、札幌市のコンプライアンス欠如が問われるものです。
ただ、20年前はコンプライアンス意識が社会に余り浸透していなかったよう思えます。
今、フジテレビ問題を背景に、企業ガバナンスやコンプライアンス意識が高まっています。
今回の札幌市の判断は、ある意味、時代に則したものなのかもしれません。