LIXIL「ニューライフ」と称し希望退職1200人募集!その背後にある「アジャイル」な組織転換

独り言

2020/10/30 日本経済新聞

LIXILグループは30日、希望退職を募集すると発表した。対象者は2021年3月25日時点で事業会社LIXILに在籍する40歳以上かつ勤続10年以上の、工場の人事総務・経理部門以外やデジタル部門などを除く正社員約9千人。募集人数は1200人。特別退職金を支給し21年1~3月期に費用計上する。21年3月期の連結業績予想への影響については応募者数や金額が確定し次第公表する。

21年1月12日から22日まで募集する。退職する社員に対して本人の要望に応じて再就職のための支援を行う。20年10月時点のLIXILの全体の正社員は約1万6800人。

LIXILグループでは国内事業は売上収益のうち約7割を占めているなど重要な役割を担うが、近年国内の新築住宅市場は急速に縮小するなど取り巻く環境は大きく変化している。長期にわたる持続的な成長に向け組織の簡素化やデジタル化の推進といった重点分野の見直しなどを行い、それに合わせ今回の希望退職の募集は19年11月から国内で順次展開している人事策の一環としている。

LIXILグループは19年11月に国内事業スリム化のため50歳以上で勤続10年以上の正社員を対象とした早期退職募集を発表し、497人が応募した。

「消費者の嗜好の変化とデジタル化の進展によって、従来のビジネスモデルが通用しなくなっている」

LIXILは事業環境の変化に直面しています。

「事業構造転換」と「組織改革」

同社は包括的人事施策「変わらないと、LIXIL」を進めています。

この人事施策の一環として、希望退職プログラム「ニューライフ」が存在します。

「ニューライフ」の募集要領
①対象者
退職日時点において、株式会社LIXILに在籍する40歳以上かつ勤続10年以上の正社員
(工場(人事総務・経理部門以外)・物流センター・デジタル部門を除く)
②退職日
2021年3月25日
③募集人数
1200名
④募集期間
2021年1月12日から2021年1月22日まで
⑤優遇制度
・通常の退職金に特別退職金を加算して支給します。
・本制度を利用して退職する社員に対して、本人の要望に応じた再就職のための支援を行います。

これだけ見れば、一般的な企業の早期退職や希望退職の募集と変わりなく思えます。

LIXILグループは2019年に、50歳以上で勤続10年以上の正社員を対象とした早期退職募集を発表し、497人が応募しています。

巨大な企業グループとは言え、500人弱の正社員が自主的に早期退職するには、とても多いよう感じられます。

その理由は、LIXILの公式サイトを見ることで理解できます。

2016年、LIXILの社長兼CEOに就任した瀬戸欣哉は、目的意識と起業家精神にあふれた会社へと変革するべく、新たな挑戦に乗り出しました。

瀬戸の狙いは、エンドユーザーのニーズを理解し、その変化に機動的に対応できる、顧客志向の組織へと生まれ変わることでした。

そのためには、組織を簡素化し、より強い企業となるための構造改革が必要でした。そして、従業員が各々の潜在能力を最大限に生かせるような風通しの良い社内風土を根付かせることで、従業員の活力を高め、より機動的な組織を作ることを目指しました。

役職名ではなく、実際に担っている業務を重視

役職の簡素化に加え、LIXILは、今年、経営管理体制を見直し、社長1名の下、専務役員と常務役員の2つの階層で構成する体制変更を行いました。経営幹部の数も50人から24人に減少しました。

瀬戸は、こう強調します。

「高い役職にある人だけがリーダーということではなく、誰もがリーダーになる能力を有しています。どのような役職についているかで、貢献度が決まるわけではないのです。役職を気にすることで活躍の場を限定することなく、誰もが実力を発揮できる環境を作ることを目指しています」

LIXILは、実力主義を徹底し、より「アジャイル」な組織に転換するため、さらなる変革を進めています。その一環として、全社において、管理職以上の役職の簡素化と統一を行います。

(LIXIL HPより抜粋)

「アジャイル」な組織の転換とは、社会や顧客ニーズ等の変化に対して、俊敏に対応できる組織への転換と言えます。

ここ2~3年の社風の変化に、追従できないベテラン社員も多くいることでしょう。

「役職についているかで、貢献度が決まるわけではない」

40代、50代で役職頼りに仕事をしてきた者にとっては、会社は居心地の悪い空間となってしまったことでしょう。

希望退職プログラム「ニューライフ」

その背後には、「実力主義の徹底」と「アジャイルな組織転換」が潜んでいます。