近年、高齢者の持家を狙った強引な売買勧誘、いわゆる「押し買い」が問題視されています。
高齢者宅におよそ10時間も居座った悪徳業者がニュースとなり報道されています。
持家を売却した高齢者が不動産業者とサブリース契約を結び、その後、契約終了時に住まいを失うケースが相次いでいます。
サブリース契約は、本来、賃貸市場の流動性を高める仕組みの一つですが、持家所有者にとっては不利に働く場面が多く見られます。
一方で、政府は高齢者の賃貸住宅確保を目的とし、居住支援法人によるサブリース方式の活用を推進しています。
この対照的な二つの動きは、サブリースの「善」と「悪」の側面を浮き彫りにしています。
押し買いによる持家型サブリースの問題点を整理するとともに、高齢者賃貸市場におけるサブリースの有効性を知り、この制度の持つ二面性について考えます。
【持家】押し買いによるサブリース問題
持家を対象としたサブリース契約では、高齢者が「住宅を活用した安定収入を得られる」との謳い文句で契約を持ちかけられるケースが多く見られます。
しかし、契約の実態を見ると、所有者側にとって厳しい条件が設定されていることが多く、契約の透明性が不十分であるため、契約終了時に所有者が住み続けられない事態に陥ることもあります。
特に契約満了後に転貸先が見つからず、業者が契約解除を通告すると、所有者は住宅を失い、新たな住居を確保することが困難になります。
さらに、契約の解除には高額な違約金が課されることがあり、所有者が不利な条件で契約を維持せざるを得ない状況が生じます。
高齢者が契約内容を十分に理解せず、業者の説明を鵜呑みにしてしまうケースも多いため、持家型サブリースの問題は深刻な社会課題となっています。
【賃貸】政府が進めるサブリース方式の促進
一方で、賃貸市場におけるサブリースは異なる形で活用されています。
政府は居住支援法人によるサブリース方式を促進し、高齢者の住宅確保を支援する政策を打ち出しています。
従来、高齢者は賃貸契約を結ぶ際に保証人の問題や収入の不安定さを理由に入居を拒否されるケースが多くみられました。
しかし、居住支援法人が物件を借り上げることで、オーナー側のリスクを軽減し、高齢者が安心して入居できる環境を整えることが可能となります。
この方式の最大の利点は「断らない住宅」として機能する点にあり、高齢者が居住の安定性を確保できる可能性が高まることでしょう。
また、自治体と連携し、一定の住居保証を提供することで、高齢者が市場の変動に左右されにくい住宅環境を享受できる仕組みも導入されつつあります。
公的な支援と結びつくことで、賃貸市場におけるサブリースは高齢者の住宅確保において重要な役割を果たすことでしょう。
サブリースの善と悪
このように、高齢者にとってサブリース方式は持家と賃貸では全く異なる影響を持っています。
持家のサブリースは契約内容の不透明さや契約終了時の住居喪失リスクが問題視される一方、賃貸市場では居住支援法人を介したサブリースが高齢者の住宅確保を支える仕組みとして機能しています。
持家の場合、所有者の権利保護が不十分なまま契約が進められることが多く、高齢者が意図しない住居喪失に直面する可能性があります。
そのため、契約の透明性を高め、所有者側の保護を強化する必要があるでしょう。
一方、賃貸のサブリースは高齢者の住宅市場へのアクセスを改善する効果があり、適切に運用されれば「断らない住宅」の実現につながることでしょう。
今後、政府は持家と賃貸のサブリースを区別し、それぞれに適した法整備を進めることが求められます。
高齢者が安心して住み続けられる環境を構築するために、サブリースのあり方を慎重に議論する必要があります。