2020年7月9日
高校生に、学習した内容や部活動の実績を記録してもらい、大学入試で活用する新たなシステムについて、文部科学省は、これを運営する一般社団法人への許可を取り消す方向で調整していることが関係者への取材でわかりました。このシステムは、およそ18万人の生徒が利用していることなどから影響が懸念されます。
文部科学省は、高校生に学習した内容や、部活動の実績、さらに、ボランティアなどの活動を、ポータルサイトに記録してもらい大学入試などに活用する、「JAPAN e-Portfolio」と呼ばれるシステムの開発を進めてきました。
このシステムは、去年から一般社団法人の「教育情報管理機構」に運営が任され、今年度の入試から本格的に導入される予定でしたが、関係者によりますと、入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めないことなどから、文部科学省が運営許可を取り消す方向で調整していることがわかりました。
すでに、全国およそ18万人の生徒がこのシステムを利用していることなどから影響が懸念されます。
このシステムをめぐっては、生徒がポータルサイトを利用する時に、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」のIDを取得する必要があることが明らかになり、萩生田文部科学大臣も、ことし2月、運用の見直しに言及していました。
国が進めてきた大学入試改革は、大きな柱だった英語の民間試験と記述式問題の導入が、すでに見送られるなど、混乱が続いています。
出典:NHK NEWSWEB 大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省
英語の民間試験や入試での記述式問題は、いわば水際での見送りでしたが、今回の件は全国で18万人の生徒が新システムを利用しています。
筆記試験では測定が困難とされる生徒の「主体性」を評価することが目的ですが、部活の実績やボランティア活動等で、その「主体性」がそもそも評価できるか疑問です。
部活やボランティア活動が入試で評価されるとあれば、主体性など持たずに、単に入試が少しでも有利になるよう「実績づくり」で活動された生徒もいることでしょう。
入試を意識した高校生活を過ごされた生徒にとって、大切な時間をある意味奪ったこととなります。
入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めない
こんな理由が通じるのでしょうか?
また、機構のシステムの運用は、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っており、学習内容等を記録する際に、ベネッセが発行するIDを取得する必要がありました。
「企業への利益誘導」という声も上がっています。
英語力、記述式、主体性
どれも従来の入試では見えにくいものを無理に見ようとした感があります。
大学の一次(共通)試験であれば、全ての受験生を対象にこれらを見る必要が本当にあるのでしょうか?
本当に必要であれば、二次試験で大学が独自に試験や面接をし、判断すればいいものと思われます。