2020年5月27日
企業が下請け業者に対し立場を利用して不利益を与えるなど、下請け法に違反したなどとして、公正取引委員会が昨年度、勧告や指導を行った件数は8000件余りに上り、これまでで最も多くなりました。
公正取引委員会によりますと、昨年度、全国の企業に対し下請け法違反や、そのおそれがあるとして勧告や指導をした件数は8023件で、昭和31年の下請け法施行以来、最も多くなりました。
発注書などの必要書類を渡さないといったケースが多く、支払いの遅れや、発注時に決めた価格よりも支払い金額を引き下げるケースも目立っています。
なかには企業が長時間労働の削減に取り組むため、下請け業者に対し適正なコストを負担せずに短期間での納品を求めるなど、働き方改革推進のしわ寄せとも言えるケースも複数あったということです。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によって、返品や発注の取り消しなど下請け法に関わる相談が、これまでに300件ほど寄せられているということです。
公正取引委員会の菅久修一事務総長は、27日の定例会見で「新型コロナウイルスの影響も含めて、違反行為には厳正に対処するとともに違反行為の未然防止のため、下請け法の普及啓発に努めたい」と述べました。
出典:NHK NEWSWEB 下請け法 違反などの勧告や指導8000件超 過去最多 公取委
下請法を簡単に言えば、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された特別法です。
いわゆる「下請けいじめ」を取り締まる法と言えるでしょう。
公正取引委員会のホームページを見れば、勧告された企業名が公表されています。
例えば、令和元年度において、森永製菓株式会社が「下請代金の減額の禁止」に違反したとし、その概要が記載されています。
森永製菓株式会社は,小売業者等に販売する食料品の製造を下請事業者に委託しているところ,次の行為により,下請代金の額を減じていた。
単価の引下げ改定を行ったところ,単価の引下げの合意日前に発注した食料品について引き下げた単価を遡って適用し,平成28年11月から平成30年5月までの間,下請代金の額から,下請代金の額と発注後に引き下げた単価を遡って適用した額との差額を差し引いていた。
減額金額は,下請事業者5名に対し,総額958万2853円である。
下請法の正式名称は、「下請代金支払遅延等防止法」で1956年(昭和31年)6月1日公布されていますが、平成15年(2003年)の法改正により、規制対象が役務取引に拡大され、違反行為に対する措置の強化が図られています。
是正勧告した企業の社名公表は、2004年以降からとなっています。
新型コロナウイルスの影響は、確実に「勧告」や「指導」件数を押し上げることでしょう。
今後が注目されます。