2021年4月9日 毎日新聞
生活保護を申請する際に自治体が親族に連絡し、援助できないか否かを問い合わせる「扶養照会」について、厚生労働省は、照会を拒んだ場合に丁寧に理由を聞き取って確認するなど申請者の意向を尊重するよう求める通知を出した。
通知は3月30日付で、自治体の職員が参照する「生活保護問答集」を改正する形で行われた。問答集によると、申請した人が扶養照会を拒んだ場合、本人に「特に丁寧に聞き取り」を行った上で、本来は扶養義務者にあたる親族について「扶養が期待できない者」か否かを判断するとした。
「できない」と判断すればさらに個別に検討し、「扶養照会を行わないこととして差し支えない」とした。
従来は申請者の意向については記載がなかった。厚労省は「これまでも運用していたことだが、現場でより丁寧に対応してもらうために記載した」と話す。
扶養照会を巡っては、申請者と親族が20年ほど音信不通なら扶養照会をしなくていいとされていたが2月末の見直しで、この期間を「10年ほど」に緩和した。
さらに親族が70歳以上の高齢者や未成年であるケースや、親族から家庭内暴力(DV)を受けていた場合も照会不要だったが、虐待を受けているケースもこれに含めている。
日本国憲法では
と定めており、誰でも生活に困ったときは、その理由が何であれ生活保護法の定める条件のもと、生活保護を受けることができます。
保護の要件は
②資産は生活維持のために活用すること
③年金や手当など、他の制度で給付を受けることができる場合は、それらの制度を活用すること
それでもなおかつ生活ができない場合、厚生労働大臣の定める最低生活費の基準額に満たない場合、保護が適用されます。
生活困窮に陥った原因は問いません。
生活保護の利用にあたって「扶養照会」が大きなハードルとなっています。
福祉事務所が生活保護を申請した人の親族に対し、援助できるかどうか問い合わせを行います。
厚労省のHPには、
「親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください」
とあります。
「家族に知られるのが嫌」と申請をためらうケースがおきています。
扶養照会をして親族の支援につながるのでしょうか?
2017年の厚生労働省の調査では、年間約46万件の扶養照会が行われ、援助につながったのは1.45%にすぎません。
福祉事務所の職員からは「業務負担が大きいだけ」「意味がない」「税金の無駄」という批判が上がっています。
また、扶養照会は法律上の義務ではありません。
今回、厚労省は申請者の意向尊重を求める通知を出していますが、そもそも扶養紹介が無意味なよう思えます。
頼れる親族がいれば頼っています。
頼れないから生活保護を申請しているのです。