退職した検察官等が担う公証人のミス多発?公表拒む法務省

独り言

公証人とは

公証人は、国の公務である公証事務を担う公務員です。しかも、公証人が担う公証事務は、国民の権利義務に関係し、私的紛争の予防の実現を目指すものであり、公証人が作成する文書には、強制執行が可能である公正証書も含まれます。そのため、公証人は、単に高度な法的知識と豊富な法律実務経験を有していることが必要であるばかりでなく、公務員として、党派性がなく、中立・公正でなければなりません。この点で、一方当事者からの依頼を受けて、依頼者の代理人等として依頼者の公正な利益のために活動する弁護士や司法書士等とは、根本的に異なっています。

出典:日本公証人連合会 第1公証人の使命と公証業務について

公正証書は、公証人がその権限において作成される公文書です。

遺言、金銭消費貸借、離婚等、当事者の強い意思に基づき作成され、強い推定が働き、相手方が虚偽であると反証しない限り、強い推定を覆すことはできません。

例えば債務不履行の場合、裁判所に訴えることなく直ちに強制執行できる効力を有します。

公正証書にミスは許されません!

ミスとは、公文書の文言のミスだけではなく、印鑑証明と公正証書の印影が違う等の単純ミスも含まれます。

公正証書にミスがあれば効力は失われてしまいます。

当事者の意思も失われることになります。

2019/10/11

00年代初頭に「公正証書問題対策会議」の副代表として活動した椛島敏雅弁護士(福岡市)は、「公証人のミスは決して珍しくない」と指摘する。

椛島氏らは地方法務局が年に1回、公証役場に行う立ち入り調査の記録を情報公開請求し、開示された03年度分を分析した。それによると、全国552人の公証人のうち、59%に当たる329人がミスを指摘されていた。1126件のミスのうち672件が公正証書関連で、印鑑証明と公正証書の印影が違うといった単純ミスも目立ったという。

本紙も、法務省に18年度の立ち入り調査の結果を情報公開請求した。各公証人が作成した18年度の報告書568枚が開示されたが、肝心のミスなどの指摘件数は黒塗りで非開示だった。

法務省は「事実上の公務員である公証人の名前は開示の対象。一方で、公証人の報酬は手数料などで賄われており個人事業主の性格が強く、ミスの件数を開示すれば競争上の利益を害する恐れがある」と説明。過去に開示した理由は「判断が間違っていたとしか言いようがない」と話した。

日本公証人連合会によると、遺言公正証書の作成件数だけでも18年は約11万件に上り、1989年の2・7倍に増えた。公証人は登用試験で任用され、研修を受けて就くと法律で定められるが、実際には退官した検察官や裁判官から任用する特例措置が長年続く。

今村与一横浜国立大教授(民法)は「独立した法律専門職にふさわしい養成教育や、継続研修の体制を欠いていることがトラブルの最大の要因」と話す。

法務省に懲戒権がある司法書士の場合、懲戒処分をすれば「遅滞なく官報で公告」すると定められるが、公証人に公表規定はない。全体のミスの件数でさえ法務省は回答しなかった。

出典:西日本新聞 公証制度揺らぐ信頼 ミス件数 国公表せず「聖域化」 効力失う例も

現在は開示されていない公証人のミス。

過去に開示した理由は、

「当時の判断(開示)が間違っていた」

との法務省が説明しています。

過去に間違って開示されたものでは、

全国552人の公証人のうち59%に当たる329人がミスが指摘

この状況が継続しているのであれば、法務省も公開できないことでしょう。

平成29年5月の参議院法務委員会の質疑で、

公証人の数は全部で496人、うち前職が裁判所の職員又は法務省の職員であった者は493人、ほとんどが裁判所の職員又は法務省の職員であった方ということになる。言ってみれば裁判所の職員と法務省の職員の、いい言葉を使えば「再就職先」、悪い言葉を使えば「天下り先」ということになる。平均年齢は、64歳と非常に高齢とまではいかないが、60歳以上の方々が多い職場ということになる。(東徹委員の質疑より)

公証人の99%が、裁判所や法務省の職員と言うことになります。

これでは「天下り先」と言われても仕方がないことでしょう。

西日本新聞記事中の今村教授は、

「公証人は退職した元検察官らにご褒美として与える仕事ではない」

公証人は高齢化しており、過去の法律知識だけでは対応できないことを指摘しています。

法務省は、現状の実態を開示すべきであり、否があれば公証人の要件等を見直すべきです。

西日本新聞の言う通り、

国民に開示することなく「聖域化」すれば、公証制度の信頼は揺らぐことでしょう。