「人生100年時代」
今の時代を表す言葉としてすっかり定着しました。
「人生100年時代」を別の言葉で言い換えるとすれば、「高齢化」というワードが妥当かもしれません。
「超高齢化時代」「少子高齢化時代」、何かとてもネガティブな印象があります。
例えば、
①「少子高齢化時代、70歳まで働こう!」
②「人生100年時代、70歳まで働こう!」
やはり、同じことを言っているのに、②の方が前向きに捉えることができます。
なぜ、そう思わせるのでしょう?
高齢化時代という言葉になれば、現時点における「平均寿命」や「健康寿命」をイメージすることでしょう。
男性であれば平均寿命が約81歳、健康寿命が約72歳です。
①は人生の大部分を「働こう!」とイメージさせます。
年老いても「そんなに働かせるのか!」とイメージすることでしょう。
②は70歳まで働いても残り30年あるとイメージさせます。
「それなら働いてもいいか」そんな印象を与えるかもしれません。
どちらも同じことを言っているのですが、「人生100年時代」の方がポジティブ感がもてます。
将来的に人生100年時代が本当に来るのでしょうか?
現時点における100歳まで生きる確率は、
男性の場合、65歳まで生きれば約4%と言われています。
40年後の未来においても
65歳まで生きれば約6%と推計されています。
この数値は、厚生労働省が社会保険審議会の年金部会に対し提示したものです。
65歳まで生きるという前提条件を外し、生まれてから100歳まで生きる確率は、本当に極僅かであることが理解できます。
厚生労働省では、100歳以上の高齢者の人数増加のデータも公表しています。
2018.9.14
全国の100歳以上の高齢者が9月現在、前年比2014人増の6万9785人に上り、48年連続で過去最多を更新したことが、14日公表された厚生労働省の調査で分かった。20年前の6・9倍、10年前の1・9倍。女性は6万1454人で、全体の88・1%を占めた。厚労省は「出生数の多い世代が100歳を迎えていることや医療技術の進歩などが要因と考えられる」と分析している。
出典:産経新聞 100歳以上の高齢者、6万9785人に 48年連続で最多更新
同じ厚生労働省のデーターですが、人数でみるのと確率でみるのでは、印象が大きく異なります。
人生100年時代とは、100歳まで生きることを平均的とかスタンダードと考えてはいけません。
現時点において、特に男性が100歳まで生きるのは希なことです。
自分の将来や人生を考える場合、
男性であれば、
「健康寿命」 約70歳
「平均寿命」 約80歳
「人生100年時代」 100歳
意識する年齢かと思われます。
老後資金に関しては、100歳まで考えるのはいいでしょう。
あなたが今健康であれば、あなたの人生はまず「健康寿命」に向けて後悔のないよう生きていくのがよいでしょう。
「年金100年安心」は国民に誤解を生じさせました。
「人生100年時代」も国民を誤解させる恐れがあります。
人生100年時代という言葉自体は、個人的には未来をポジティブに捉えた表現だと思います。
100年後、200年後は「人生100年時代」が到来するかもしれません。
遠い未来といった意味で使うのはいいでしょう。
しかしながら、この先50年では「人生100年時代」の到来は全く期待できません。
現時点において言葉と実際のギャップが、平均寿命でみると20年近くあり、言葉通りではないことを理解すべきと思います。
恐れているのが、
「人生100年時代」という言葉が、余りにも世間に浸透している事に危機感を持っています。
国民が健康寿命のぎりぎりまで、生涯現役という言葉を使い、働く方向へと仕向けられています。
「人生100年時代」という言葉を全ての国民がしっかり理解することが大切です。
その上で、70歳定年や年金支給年齢70歳などの政策が、是か非か国民が判断するのであれば問題はありません。
「人生100年時代」の言葉に潜む、現実との乖離を政府は理解して使っています。
国民も人生の尺度をきちんと持つことが必要であり、「100年」という言葉に流されず政策の是非を判断しなければなりません。