2020年1月29日
子どものころに虐待を受けた経験がある高齢者は、受けていない人に比べ、年間の医療費が11万円余り高くなるという調査結果を東京医科歯科大学などの研究グループがまとめ、虐待を防ぐことが社会全体の医療費抑制につながる可能性があると指摘しています。
高齢者の健康問題について研究している東京医科歯科大学などのグループは、65歳から75歳までの高齢者およそ1000人を対象に、子どものころの虐待経験と年間の医療費との関係について統計学的に分析しました。
その結果、18歳までに親から身体的な虐待やネグレクトなどの「虐待を受けた経験がある」と答えた高齢者は全体の18%いましたが、「経験がない」と答えた人たちに比べて、年間の医療費が11万6000円余り高かったということです。
研究グループによりますと、虐待の経験が高齢者の病気のリスクを高めることは従来の研究でも指摘されていましたが、医療費との関係が示唆されたのは初めてで、虐待の経験で生じる高齢者の年間の医療費は日本全体で3330億円にのぼるとも試算しています。
東京医科歯科大学の伊角彩特別研究員は「虐待が脳に影響を及ぼしストレスから慢性的な病気をひきおこすおそれもあると考えている。虐待を予防し早期に介入することが将来的な医療費抑制につながる可能性がある」と話しています。
出典:NHK NEWSWEB 子どものころに虐待経験の高齢者 年間医療費11万円余高く
高齢者(65歳~75歳)の虐待経験をもつ割合は18%となっています。
約5人に1人が虐待経験を持っています。
これは多いのでしょうか?少ないのでしょうか?
世界保健機構(WHO)によると、全成人の4人に1人は年少児に身体的虐待を、女性の5人に1人、男性の12人に1人は年少時に性的虐待を受けていると報告(2015年)されています。
虐待の数を把握することは、とても難しい問題です。
虐待を躾(しつけ)と称し行われる場合もあり、特に幼少期においてはその見分けがつかないことでしょう。
実際に虐待を受けている子であっても、親の虐待とは認識せず「自分の行いが悪い」と思う子も多く存在します。
高齢者においても、「今思えば」虐待と判断される方もいることでしょう。
虐待とその後の「病気」の関係を見出すことは、とても難しい問題です。
今回の研究では、「医療費」を調査することで、全体的な傾向がつかめたものと思われます。
親の手から離れることで、虐待はある意味解消されます。
今後、虐待の根絶が難しい以上、虐待された者の「病気予防対策」を見出すことが期待されます。