リスキリングとは?
簡単に言えば、
リスキリングは、今から10年程前から欧米で広まったもので、デジタルテクノロジーが発展することで、今の仕事がなくなる危機感から生じたものとされています。
近年、日本においてもDXが注目され、デジタルテクノロジーによって仕事の効率化が進んでいます。
身近な例では、スーパー等のセルフレジは省力化のためのDXであり、レジの人員削減に貢献しています。
少子高齢化で、労働力不足といわれている日本にとって、企業がDXを取り入れるのは必然です。
欧米で言われるリスキリングは、主に労働者を今後なくなっていく仕事からデジタル等の成長産業に労働力を移動させることが目的です。
2023年6月、岸田政権は「三位一体の労働市場改革」を打ち出しています。
少し具体的に言うと、
・リスキリングによる能力向上支援
・個々の企業の実態に応じた職務給の導入
・成長分野への労働移動の円滑化
を同時に実行することで、成長産業に労働移動を促し、「構造的に賃金が上がる仕組み」を作ることをねらいとしています。
ある意味、日本独自のリスキリング政策と言えます。
リスキリングは大きく分けて2パターンあります。
①企業内のリスキリング(アップスキリング)
企業内の従業員が新しいことを学び、社内で新しい仕事に移ることを目的とします。
②市場のリスキリング(キャリアチェンジ)
主に企業の労働者が新しいことを学び、社外の新しい仕事へ移ることを目的とします。
リスキリングを通じて、労働者は変化する労働市場の要求に応じて自身の価値を高めるというのが建て前です。
2022年10月3日
岸田総理は国会での所信表明演説にて、今後5年間で合計1兆円を個人のリスキリング支援に投資することを公表しています。
リスキリングの効果についての疑問
政府は「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を経済政策の三大柱として掲げています。
リスキリング支援は、「構造的な賃上げ」を実現するための戦略の一つとされています。
果たして企業内でアップスキリングすることで、構造的な賃上げが可能なのでしょうか?
社員のスキルがアップすれば賃金アップに繋がる発想が理解できません。
リスキリングと言えば聞こえがいいですが、言い換えれば社内研修のようなものです。
社内研修に税金を投入し、労働生産性が高まり、実質賃金の上昇が見込まれ、結果として構造的な賃上げが実現されることは想像できません。
一部の大企業で、リスキリングによる効果があるのかも知れませんが、中小含め多くの企業では効果が見込めないでしょう。
日本では特にIT分野をはじめとする「高度なスキル」が必要な職業において人材不足が指摘されています。
2023年度デジタル競争力ランキングで日本は32位です。
1位アメリカ、2位オランダ、3位シンガポール・・・6位韓国・・・・19位中国・・・
労働力をその方面に流動を促したいのは理解できます。
労働者が実務的なスキルを獲得し、生産性の向上を図ることが急務とされています。
キャリアチェンジにおいても、リスキリングで高度なスキルが身につくのか疑問です。
企業のエイハラ!求められるのは「若さ」と「実務経験」
キャリアチェンジとは、簡単に言えば転職と言えます。
若さと表現したのは、業界によって若さが異なります。
例えば、タクシー業界で40代は若い人材かもしれません。
一般に40代、50代の中高年の転職は困難です。
若さをカバーするのが実務経験と言えるでしょう。
中高年で新たな志をもって、新たな仕事にチャレンジしようとしても、実務経験がなければ採用されるのは困難です。
中高年がリスキリングすればキャリアチェンジが可能なのでしょうか?
中高年と言うだけで、多くの企業が面接すらせず転職を受入れません。
企業のエイハラと言えるでしょう。
中高年はその年齢で企業に差別されています。
(そもそも人材が足りない業界であれば、リスキリングしなくても中高年でも転職できます)
中高年の再就職は、企業のエイハラによって選択肢が狭まっています。
企業のエイハラが解消されなければ、中高年のリスキリングは無意味なものとなるでしょう。