札幌中心部のHBCの旧社屋跡地に建設中の高層ビルで、大手ゼネコンによる「施工不良」と「虚偽報告」が発覚しました。
建設は、ほぼやり直しとなり、完成は2年以上遅れる見通しとなりました。「施工不良」と「虚偽報告」が発覚したのは、札幌市中央区のHBCの旧社屋跡地で建設が進められていた高層ビル「札幌北1西5計画」です。
地上26階、地下2階で、アメリカのホテル大手・ハイアットグループが札幌初進出するなど、来年2月に完成予定でした。
しかし、事業主で、東京に本社を置くNTT都市開発によりますと、1月末に現場を視察した際、発注したボルトと違ったものが使われていたことが判明。
その後の調査で、鉄骨の柱の水平度のずれやコンクリートの厚さが不足するなどの「施工不良」が多数見つかったということです。
さらに、この「施工不良」について、工事を担当した大手ゼネコンの大成建設が、計測した数値を改ざんし、NTT都市開発に虚偽の報告をしていたこともわかりました。
ビルの工事の進捗率は、22・8パーセントでしたが、NTT都市開発は、このまま建物が完成した場合、建築基準法に違反するおそれがあるとして、地上部分のすべての鉄骨と地下の一部を撤去し、建て直すことを決めました。
このため、完成は当初予定の来年2月から、2026年6月末に2年4か月遅れる見通しです。
大成建設は、HBCの取材に、品質管理の担当者が「施工不良の指摘を受けた際に、ほかの工事との調整で工期が遅れると懸念し、数ミリ程度なら問題ないと考えた」と説明したということです。
また、ほかのビルに同様の「施工不良」は起きていないとしています。
大成建設は、今回の事態を受け、建築部門の責任者である取締役と執行役員の辞任を発表しました。出典:HBC北海道放送 3/16(木)
札幌北1西5計画とは
(仮称)札幌北1西5(旧北海道放送本社跡地)計画は、NTT都市開発株式会社が事業主となり開発中の計画建物です。
建物用途は、事務所、ホテル、店舗、駐車場(136 台機械式立体駐車場)となっています。
2021年10月着工、11月に起工式を行い本格着工しました。
当初の竣工予定は、2024年2月で工期は2年4ヶ月を予定していました。
NTT都市開発によると事業の開発コンセプトは、
START LOCATION Sapporo
~札幌の新たなビジネス・旅・賑わいの発信拠点の創造~
価値観がめまぐるしく変化する時代に、多様な人が集い、交わり、発見し、共創する「こから始まる場所」をつくり札幌・北海道の発展に貢献します。
コンセプトの一つに「旅の出発拠点」があります。
ハイグレードな国際的ホテルチェーンを誘致し、上質なサービスと街の魅力を堪能できる体験を提供すると計画にありました。
2022年6月、ハイアット ホテルズ コーポレーションの関連会社とホテル運営委託契約を締結し、ホテル名称を「ハイアット セントリック 札幌」に決定しました。
「札幌にハイアットが初進出!」と話題になりました。
このホテルは、地上26階、地下2階建の複合ビルの1階の一部および 17階~26階にあり、17階のロビーはホテルロビーとして札幌随一の高さ70mに位置します。札幌市街を一望する客室は全216室が予定されています。
今現在、工事の進捗率は22.8%でしたが、「完成は当初予定の来年2月から、2026年6月末に2年4ヶ月遅れる見通し」とあり、工期でみれば一からやり直しと言えます。
歴史ある大手ゼネコン大成建設
2021年度の売上高で見れば、鹿島建設、大林組に次ぐランキング3位のゼネコンです。
大成建設は、1873年(明治6年)創業、今年150周年の節目の年を迎えています。
日本各地に15の支店を持ち、国内営業所等は42カ所、海外にも9カ所の営業所を持つ巨大企業です。
2019年11月に竣工を迎えた国立競技場は、設計・施工一貫の強みを活かし、「オール大成」の力を発揮し成し遂げました。
2016年12月に本体工事に着工し、累計約150万人、ピーク時には1日約2800人が働く現場を束ね、およそ3年で完成に至っています。
提案・設計・施工に至る技術力は、日本が誇る世界最高峰の技術と言えます。
このような企業が、データーの改ざんや虚偽報告をしては、今まで築いた信頼はいっきに崩壊します。
企業の信頼は株価に如実に現れます。
株価が前日終値と比べて一時400円(9%)安の4030円まで下落したのは、信頼の失墜を意味しているよう思われます。
工期至上主義の建設業界
「数ミリ程度なら問題ない」
品質管理の担当者の誤った判断が、企業の信用に関わるおおきな問題に発展しました。
虚偽報告をした担当者を擁護する訳ではありませんが、日本の建設業界において「工期至上主義」という風潮があります。
「施工不良の指摘を受けた際に、ほかの工事との調整で工期が遅れると懸念」とあり、この言葉からも工期を絶対のものとし重視しているよう伺えます。
今回の問題の根底にあるのは「工期至上主義」なのかもしれません。
施工不良及び虚偽報告の発覚で、本社の取締役兼専務執行役員(建築総本部長兼建築本部長)と常務執行役員である札幌支店長が辞任する事態となりました。
大成建設においても今回の事態を重く受け止めているよう伺えます。
ただ、ほかのビルに同様の「施工不良」は起きていないとの報道がありますが、今回の件は事業主であるNTT都市開発が虚偽報告を見破った点にあります。
大成建設において虚偽報告が常習化していないことを願います。
(この記事の一部はNTT都市開発のNEWS Releaseから引用しています)