児童手当拡充へ 所得制限撤廃 対象年齢引き上げも検討へ 政府
2023年2月3日
少子化対策の強化をめぐり、児童手当の拡充を求める声が与野党双方で強まっています。政府は所得制限の撤廃や支給対象年齢の引き上げを含め、具体策の検討を進める方針です。
児童手当は、中学生までの子どもがいる世帯を対象に1人当たり最大で1万5000円が支給されている一方、一定の所得基準を超える世帯を対象外としています。
岸田総理大臣が「次元の異なる少子化対策」を掲げたことから国会では児童手当の拡充をめぐる議論が活発になっていて、2日に行われた与野党の国会対策委員長による会談では野党側が所得制限の撤廃を求めたのに対し、公明党は賛成する意向を示し、自民党は持ち帰って政府に伝える考えを示しました。
また、与野党双方では手当の支給対象の年齢を18歳まで引き上げるよう求める声も強まっています。
政府は3月末をめどに少子化対策強化に向けた具体策のたたき台をまとめることにしていて、与野党の意見も踏まえ、所得制限の撤廃や支給対象年齢の引き上げを含め、具体策の検討を進める方針です。
ただ自民党内には「所得の高い人より、厳しい状況にある人への支援を手厚くすべきだ」などという声もあり、丁寧に議論を行いたい考えです。
出典:NHK NEWS WEB
児童手当の起源は1972年から
児童手当制度は、児童手当法に基づき、1972(昭和47)年1月から実施されている。
発足当初は、第3子以降を対象とし、月額3,000円で、義務教育終了前までが支給対象であった。
その後、1974(昭和49)年に月額4,000円、1975(昭和50)年に月額5,000円に引き上げられた。
1980年代には行財政改革の中で、所得制限が強化されるとともに、1986(昭和61)年には、第2子以降に拡大する一方で、義務教育就学前に重点化された(第2子月額2,500円、第3子以降月額5,000円)。
さらに、1992(平成4)年には、第1子まで拡大する一方で、3歳未満に重点化された。このとき、手当月額は大幅に引き上げられ、第1子・第2子が月額5,000円、第3子以降が月額1万円と定められ、現在に至っている。
出典:内閣府HP:児童手当制度の目的と改正経緯より抜粋
内閣府のHPでは、2006年までの経緯が記載されています。
以降、民主党政権下で児童手当は子ども手当と呼ばれ拡充が図られます。
財源の拠出に苦労した民主党の子ども手当
民主党の選挙公約いわゆるマニフェストで、「子ども手当」の支給を掲げ政権をとると、「平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律」を2011年3月31日までの時限立法として可決しました。
2010年6月、財源問題により満額支給(2万6千円)はできず、月1万3千円(またはこれ以上)とする方針に転換しました。
この時もやはり財源が問題となり、期間限定の時限立法にしたのも財源確保が難しいことが挙げられています。
支給額及び法律名を変更した上で、2012年3月まで子ども手当を継続し、根拠法となる法律名を「平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法」とし、同法廃止後「子ども手当」は「児童手当」に戻りました。
歯止めのかからない少子高齢化
厚生労働省の平成22年国民生活基礎調査によると、全世帯に占める児童のいる世帯割合は25.3%となっています。
平成元年における同割合は40.6%、少子化の深刻さがわかります。
同調査によると、全世帯に占める65歳以上の者のいる世帯割合は42.6%、平成元年の同割合は27.3%です。
日本における世帯構成は、平成の時を経て「児童」の割合と「65歳以上の者」の割合が入れ替わったと言えます。
所得制限撤廃は世帯間格差を助長する
自民党内には「所得の高い人より、厳しい状況にある人への支援を手厚くすべきだ」などという声もあり、丁寧に議論を行いたいとしています。
現状における所得制限
児童を養育している方の所得が、下記表の①(所得制限限度額)未満の場合、表面の支給額を、所得が①以上②(所得上限限度額)未満の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)を支給します。
出典:内閣府HP
「次元の異なる少子化対策」とは言えない
児童手当は1972年に創設され、制度は拡充し続けています。
それでも少子化に歯止めが掛かっていません。
財源の問題は、民主党政権下でも明らかになっています。
ましてや、所得制限を撤廃すれば世帯間格差は助長されることでしょう。
世帯割合25.3%の少子化問題の背後には、42.6%の高齢化問題が潜んでいます。
財源で言えば、少子高齢化問題は「支える側」と「支えられる側」双方の問題です。
少子化問題と並走し、高齢化問題である「年金問題」についてもセットで議論して欲しいものです。