昭和を象徴する一億総中流社会(老害に至る背景)
一億総中流社会という言葉は、1960年代から1980年代にかけて、日本の高度経済成長期において広く使われるようになりました。
この時期、多くの国民が安定した職業に就き、住宅を所有し、教育を受け、比較的平等な生活水準を享受することができました。
この中流指向の背後には、戦後復興期における国民の経済的向上への強い希望と努力、そして政府の経済政策がありました。
具体的には、社会保障の拡充、高度経済成長を支える産業政策、農地改革や教育制度の充実などが挙げられます。
令和の格差社会について
令和においては、かつての一億総中流社会の姿は過去のものとなり、格差社会が現実のものとなっています。
この格差社会の背景には、いくつかの要因があります。
●経済のグローバル化
製造業の拠点が海外に移転し、国内の雇用機会が減少しました。また、高度なスキルを持つ人材とそうでない人材との収入格差が広がりました。
●技術革新
AIやロボティクスなどの技術革新により、一部の業界や職業が急速に成長する一方で、従来の職業が廃れてしまうケースも増えました。
●労働市場の変化(本記事の注目点)
終身雇用の崩壊、成果主義の導入、非正規雇用の増加、サービス業の拡大、テクノロジーの進化、働き方改革などが挙げられます。
●教育格差
教育費の増大や家庭の経済力による教育機会の差が格差を生む要因となっています。
正社員と非正規社員の賃金格差
最もわかりやすいのが正社員と非正規社員の賃金格差でしょう。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、正社員と非正規社員の賃金には大きな差があります。
具体的な数値は以下の通りです:
正社員の平均月収:323.4千円
非正規社員の平均月収:216.7千円
このように、正社員の平均月収は非正規社員の約1.5倍となっています。
春闘で賃上げの恩恵を受けるのは労働者の1割か?
春闘の恩恵を受けるのは、労働組合のある企業の正社員です。
厚生労働省の「令和5年労働組合基礎調査」によると、2023年の労働組合の組織率は16.3%です。これは、労働人口のうち約16.3%が労働組合に加入していることを意味します。
総務省の「労働力調査」によると、2022年のデータでは、正社員の割合は63.1%です。
単純計算ですが、労働人口全体の約10.28%しか、春闘の賃上げの恩恵を受ける可能性はありません。
全ての労働組合が賃上げ要求するとは限らないので、恩恵を受けるのはこの数値よりも低いことでしょう。
そもそも賃金の高い一部の正社員の賃上げです。ますます賃金格差は広がります。