【全世代型社会保障検討会議】健保連など5団体が要望書!既存団体にも納得感ある議事運営を

社会問題

2019年11月8日

政府の「全世代型社会保障検討会議」で議論が行われる中、経団連や健保連=健康保険組合連合会など、5つの団体が厚生労働省を訪れ、高齢化で財政悪化が進む医療保険制度の改革を会議で取り上げるよう求める加藤厚生労働大臣宛ての要望書を提出しました。

要望書では、75歳以上の後期高齢者の窓口負担を今の原則1割から2割に引き上げることや、後発医薬品の使用の促進など、医療費の適正化に向けた見直しを進めることなどが盛り込まれています。

このあと健保連など5つの団体が記者会見し、健保連の佐野副会長は「2022年には、団塊世代が後期高齢者になり始め、医療費急増が見込まれる中で、現役世代や企業の負担は限界を迎えている。給付と負担の見直しは早急の課題なので、ぜひとも早い段階で会議で議論をしてもらいたい」と述べました。

出典:NHK NEWSWEB 経団連や健保連「政府検討会議で給付と負担の見直し議論を」

全世代型社会保障検討会議とは

少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うため、全世代型社会保障検討会議を開催します。

出典:首相官邸HP

第1回の会議は、今年の9月20日に行われています。

<議長>  安倍晋三(内閣総理大臣)

<議長代理>西村康稔(全世代型社会保障改革担当大臣)

<構成員>
麻生太郎(副総理兼財務大臣)
菅 義偉(内閣官房長官)
高市早苗(総務大臣)
加藤勝信(厚生労働大臣)
梶山弘志(経済産業大臣)

<有識者>
遠藤久夫(国立社会保障・人口問題研究所所長)
翁 百合 (株式会社日本総合研究所理事長)
鎌田耕一(東洋大学名誉教授)
櫻田謙悟(SOMPO ホールディングス株式会社グループCEO取締役代表執行役社長)
清家 篤 (日本私立学校振興・共済事業団理事長)
中西宏明(株式会社日立製作所 取締役会長 兼 執行役)
新浪剛史(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)
増田寛也(東京大学公共政策大学院客員教授)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)

幅広い有識者と言えますが、全世代型社会保障検討会議を検討するのであれば、現状を知る関係者が存在しないよう思われます。

この会議の後、会見が行われ記者との質疑応答がありました。

記者からも、その点の質問が出されています。

(問)今回の会議のメンバーですけれども、経済界の代表者でしたりとか、あと、学者の皆さんという方々の面々になっていますが、社会保障の改革ということで、実際に医療や介護、また、年金の当事者の方々の声というのもまた聞く必要というのがあるのかなと思うんですけれども、そういった関係者の声をもう少し聞くべきではないかという意見というのは、今日の会議の場では、出されたりということはありましたでしょうか。

(答)もう既に御存じのとおり、社会保障改革推進会議、あるいは、社会保障審議会、あるいは労政審の代表の方に入っていただいておりまして、それぞれ、既にいろんな議論がなされておりますので、そこの議論も踏まえる形で、代表者の皆さんには御発言も頂くことになるかと思いますし、先程申し上げたとおり、与党で議論を進めていく中で、関係者、実際の現場に携わっておられる方々含めて、関係者からヒアリングなどを行うというふうに聞いておりますので、併せて、私も必要に応じて、そうした方々の声も聞きながら、様々な、多様なプロセスを通じて、しっかりと多くの関係者の皆さんの声も吸い上げる形で議論を整理していきたいと考えています。

出典:内閣府HP 西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年9月20日

社会保障改革推進会議等の会議の場で、現状の問題点は議論されており、必要であれば関係者、実際の現場に携わっている方々含めヒアリング等を行うと回答しています。

第2回の全世代型社会保障検討会議は11月8日に行われました。

その日、経団連や健保連等の5つの団体が厚生労働省を訪れ、高齢化で財政悪化が進む医療保険制度の改革を会議で取り上げるよう加藤厚生労働大臣宛てに要望書を提出しました。

要望書では、
・75歳以上の後期高齢者の窓口負担を今の原則1割から2割に引き上げる
・後発医薬品の使用の促進など、医療費の適正化に向けた見直しを進める

など、国民も知る限りの内容です。

西村内閣府特命担当大臣の記者会見の回答から、要望書に書かれた内容の議論は、別の会議で話し合われており、それを踏まえて全世代型社会保障検討会議は実施されているのでしょう。

政府は、全世代型社会保障改革担当大臣という専任ポストを設置し、一から社会保障制度を見直し改革しようとする姿勢が見られます。

ただ、全世代型社会保障の実現には、健保連等の既存団体の協力が不可欠になるものと思われます。

政府の全世代型社会保障検討会議の進め方は理解できますが、既存団体の意見にも「聞く姿勢」を疎かにすれば、制度の実行段階で支障がでることでしょう。

既存団体より要望書が出るということは、全世代型社会保障検討会議の「議事運営」に納得していないのでしょう。

同会議では、既存団体にも納得感ある議事運営を行って欲しいものです。