2020年1月23日
トヨタ自動車の労働組合はことしの春闘で、ベースアップや定期昇給などを含めた賃上げの総額として去年の妥結額を600円下回る1人当たり月額1万100円を要求する方針を固めました。ベアについては、一律での賃上げではなく、人事評価に応じて、差をつける新たな方法を提案する方針で、ほかの企業の労使交渉に影響を与えるか注目されます。
関係者によりますとトヨタ労組はことしの春闘で、去年に続き、ベアの要求額を公表せず、ベアや定期昇給などを含めた賃上げの総額として、1人当たり月額1万100円を要求する方針を固めました。
これは、去年の要求額を1900円下回り、労使の妥結額と比べても600円下回る水準です。
ベアについては、一律での賃上げではなく、5段階の人事評価に応じて配分し評価が高い社員への配分を厚くする一方で中堅クラスで評価が極めて低い社員はゼロにするなど、従来以上に差をつける新たな方法を提案する方針です。
またボーナスについては、満額回答だった去年を0.2か月分下回る、6.5か月分を要求するとしています。
トヨタ労組がこうした要求方針を固めたのは、自動運転や電動化の技術をめぐる開発競争が激しくなるなど経営環境が激変する中、組合としても危機感を示すねらいがあるものとみられます。
トヨタ労組は、来月上旬にこの要求方針を正式に決定することにしていて、こうした方針が、ほかの企業の労使交渉に影響を与えるか注目されます。
まず注目すべきは、
2020春闘において要求額を1万100円と昨年の1万2,000円よりも16%程下げたことでしょう。
公表されていませんが、当然ながら含まれるベア分も下がったことでしょう。
2019春闘では、ホンダ、スバル、スズキの各労組は、従来通りベア要求で3,000円の交渉を選択しました。
これらの労組においては、2020春闘においてベア3,000円以上の交渉は、ないと言っていいでしょう。
従来通り「ベア要求」するか、トヨタと並び「総額要求」するかは、少なからず注目されます。
自動車業界に留まらず、他企業においても2020春闘での要求額は下がり傾向になるものと予想されます。
ベアについては、一律での賃上げではなく、5段階の人事評価に応じて配分し評価が高い社員への配分を厚くする一方で中堅クラスで評価が極めて低い社員はゼロにするなど、従来以上に差をつける新たな方法を提案する方針です。
以前も書きましたが、
労働組合が「ベア」を要求してきたのは、景気による物価上昇等に賃金が対応するよう、労働者の生活を守る観点で要求してきました。
時代錯誤な表現をしますが、一律な配分だからこそ、組合の「団結力」が生まれるものと思われます。
一律でなければ、組合に反発する者も出るでしょう。
中堅クラスで評価が極めて低い組合員であれば、高い組合費を払い自身に全くメリットがなければ、組合を脱退したいと思うのは必然です。
ベア配分に差をつけることは、組合の団結力や存続の面において、長い目でみると衰退させる方向に進むものと思われます。