2020年6月22日
社会的に孤立し病気を抱えている高齢者などに、かかりつけ医が地域とのつながりをサポートすることで健康を取り戻してもらう「社会的処方」と呼ばれる取り組みを厚生労働省が推進することになりました。
「社会的処方」は、社会的に孤立し生活習慣病といった病気を抱えている独り暮らしの高齢者などに、かかりつけ医が地域とのつながりをサポートすることで、病気の長期化を防ぎ、健康を取り戻してもらおうという取り組みで、すでにイギリスなどで導入され一定の効果があると報告されています。
厚生労働省は、この取り組みを医療費の抑制にもつながるとして推進することになりました。
具体的には、かかりつけ医に、診察の際、患者の生活状況を確認してもらい、社会的に孤立している人には「地域包括支援センター」といった行政機関を紹介し、行政機関がサークル活動や患者の会への参加といった地域とのつながりを促します。
厚生労働省は年内にもモデル事業を始めることにしていて、今後、こうした取り組みに新たな手当を支払うことができるかも検討していくことにしています。
厚生労働省のホームページを見ると、
○ 地域包括支援センターはすべての保険者に設置されており、全国に4,328カ所
○ ブランチ・サブセンターを合わせると設置数は7,072カ所となる。
○ 前年比で、センターは104カ所増え、ブランチ・サブセンターが205カ所減ったため、全体で104カ所減少
○ 地域包括支援センターの設置主体は、直営が約3割、委託が約7割で、委託が増加している。
とあります。
各市町村が設置主体で、自治体から委託され、社会福祉法人や社会福祉協議会、民間企業などが運営しているケースもあり、人口2~3万人の日常生活圏域を1つの地域包括支援センターが担当していると言われています。
すべての保険者に設置され、センターだけでも全国に4328カ所もありますが、その認知度は低いように思われます。
全国を網羅する国の支援事業ですが、これだけの数があれば地域格差もあることでしょう。
やはりモデル事業を示すことは、必須の取組みと言えます。
行政機関がサークル活動や患者の会への参加といった地域とのつながりを促します。
とありますが、全国的にサークル活動等は充実しているのでしょうか?
また、孤立する高齢者に活動を促しても、高齢者自身に活動意欲がなければ普及しないことでしょう。
現状は、必要に迫られ困ってから「地域包括センター」へ支援を求めるのが一般的かと思われます。
総務省によると、2015年には「団塊の世代」が全員高齢者(65歳以上)の仲間入りをし、その人口は2019年9月15日時点で3588万人、総人口比は28.4%となっています。
このような状況下、「団塊の世代」全員が後期高齢者(75歳以上)となる2025年以降は、医療や介護のニーズが更に高まることが想定されます。
かかりつけ医が地域とのつながりをサポートすることで、病気の長期化を防ぎ、健康を取り戻してもらおうという取り組みです。
必要に迫られる前に、言い換えれば困る前に、地域包括センター等に支援を要請することになります。
地域包括センター等の許容キャパシティを十分確保する必要性があります。
今回の厚労省の取り組み自体は評価しますが、地域や現場をしっかりと把握した上で、地方自治体に丸投げするような施策にならないよう期待します。